人は人工知能(AI)をうまく使いこなすことができるのか、あるいはAIに人が使われる時代が到来するのか。京都大大学院理学研究科の橋本幸士教授は物理学者の立場でAIと積極的に関わってきた。AIと自然科学研究のこれからを聞くと、見えてきたのは物理学と哲学が融合する新しい学問の誕生、「人は『ヒト』と共に研究する」という近未来像だった。(聞き手・共同通信記者田沢穂高)

 

▽アルファ碁と「高性能なそろばん」

 ―先生がAIを意識し始めたのは。

 「2016年ですね。アルファ碁が話題になった年です」

 ―米グーグル傘下のAI開発ベンチャーの囲碁ソフト「アルファ碁」が世界トップクラスの韓国人棋士イ・セドルさんとの対局で勝った。イさんは「アルファ碁は動揺せず、集中力も途切れない。人間とはあまりにも違う」というコメントを残しています。

 「囲碁でもできるなら、物理学でもできるだろうと。それぞれの分野で未解決なことをAIに解かせてみせようという流れになりました。当時は生成AIブームの前で、自動認識などが十分可能になって...