第七章・家を継ぐ者(10)

 

「先程、申(さる)の刻(午後四時)を告げる鐘が鳴ったところでございます」

 利常の近習が即座に答えた。

「ただちに金沢に向かう。騎馬の者だけ供をせよ」

 旅装を解きかけていた...