「梨王国」の再興に向け、鳥取県がオリジナルの新品種「鳥園L」を開発し、品種登録を出願した。鳥取を代表する「二十世紀梨」の爽やかな酸味と、県オリジナルの人気品種「新甘泉(しんかんせん)」に匹敵する甘さを備える。収量が多く、保存性にも優れており、8月から12月ごろまでのリレー出荷体制を築き、生産者の収益向上につながると期待される。2030年ごろの品種登録、本格的な販売開始を見込む。
鳥園Lは、二十世紀梨の血を引く「あきづき」を基に県園芸試験場が開発した青梨。外観が重視される青梨の新品種開発は難しく、鳥取県内では07年登録のなつひめ以来となる。
平均果重531グラム、平均糖度13・5度で二十世紀梨(平均果重320グラム、平均糖度11度)と比べ、大玉で甘いのが特徴。収穫時期は9月中旬から下旬。常温でも3週間程度と日持ちが良く、冷蔵すればクリスマスごろまで鮮度を維持できる。
かつて二十世紀梨一辺倒だった鳥取の梨生産は08年に新甘泉が品種登録後、生産者の作業分散や収入安定化などを目的に、収穫期が異なる多品種のリレー出荷へとかじを切った。
主な品種の出荷時期では、ハウス栽培の二十世紀梨(8月上~中旬)を皮切りに、新甘泉(8月下旬~9月上旬)-露地物の二十世紀梨(8月下旬~9月中旬)-王秋(10月下旬~11月上旬)とリレー。露地二十世紀梨と王秋の間にあった端境期が、鳥園Lの誕生により解消される。
端境期がなくなると、小売店の店頭に継続的に鳥取の梨が並び、訴求力が高まる。農家は栽培品種の選択肢が増えて収益アップにつなげられる利点がある。
県内の梨の栽培面積は担い手の減少などで、14年の900ヘクタールが、23年は4割減の550ヘクタールとなった。新品種投入で栽培を振興するため、県は今後、生産者への普及を推進。商標としてより良い名前も付けたい考えだ。
3日、試験場で育った鳥園Lを試食した平井伸治知事は「驚くほど、おいしい。鳥取の新しい顔に育てたい」と評価。同席したJA鳥取中央琴浦梨生産部の藤井憲人部長は「大変期待している。県内の農家に広めたい」と意気込んだ。
(桝井映志)













