新しい業種の知識や技術を学ぶ、野津瞳さん(左)=松江市東朝日町、ポリテクセンター島根
新しい業種の知識や技術を学ぶ、野津瞳さん(左)=松江市東朝日町、ポリテクセンター島根

 新型コロナウイルス禍で真っ先にあおりを受けた宿泊、飲食業界の離職者らが製造、建設といった新たな分野で再起を懸ける。島根県内でも技術や知識を身に付けようと職業訓練施設の門をたたく人が増え、施設は受け皿拡大を検討する。 (多賀芳文)

 島根労働局によると、県内で2020年度に雇用保険上で退職手続きを取った人は19年度比158人減の3万1480人。担当者は全業種がコロナ禍の影響を受け、雇用調整助成金制度などで、耐え忍ぼうとしたため全体的に退職が抑えられたとみる。ところが、「宿泊・飲食業」に限ると、退職者は177人増の1607人。ダメージの突出ぶりが見て取れる。

 宿泊、飲食業界の離職者の多さは職業訓練施設の入所者にも表れる。島根職業能力開発促進センター(ポリテクセンター島根、松江市東朝日町)では21年度の入所生132人中、前職が飲食、ホテル、卸小売りなどのサービス業が28人と目立つ。例年より多いという。

 機械加工での就業を目指す「機械・CADオペレーション科」で学ぶ松江市在住の男性(40)は飲食店の料理長だった。昨春以降、客足が激減し、掃除しかすることがない日もあって「調理人らしい仕事ができなかった」と振り返る。

 売り上げの回復を願ったが、オーナーから「雇い続けられない」と告げられ今春、退職した。古里にUターンして13年間、調理現場一筋だったが「ものづくり、という面では同じ。やるしかない」と言い聞かせる。

 居酒屋のホールスタッフだった野津瞳さん(23)=松江市西川津町=は「接客が好きだったが、コロナ禍で将来を考えた」という。建設業事務、住宅営業などへの道が開く「住宅リフォーム技術科」を7月から受講。顧客の理想の住まいや考えを聞き取り、表現する意味では「接客業と変わらない」と前を向く。

 センターは21年度、コロナ禍による離職者の受け皿を広げようと「ビジネスワーク科」の定員を10人増の40人、「ICT生産サポート科」を8人増の48人に拡大した。福嶋正人所長は「コロナの影響はこちらにも表れている」とニーズを実感しており、応募傾向などを分析した上で、さらに受け皿を増やせるかどうか検討するつもりだ。