鶏やロバの鳴き声と共に高原の夜が明けた。モスク(イスラム教礼拝所)から祈りを呼びかけるアザーンが集落に響く。オリーブの木に、夏の強い日差しが照りつけ始めた。

 パレスチナ自治区ヨルダン川西岸南部に広がるマサフェルヤッタ。谷を挟んだ目と鼻の先の丘にイスラエル国旗が翻る入植地がある。イスラエルが西岸で進める占領政策の最前線だ。

 朝食を取っていた人権・平和活動家のサレム・アドラ(31)の携帯に「緊急連絡」が相次いで入った。早朝にイスラエル兵が理由も告げず...