菅首相の自民党総裁選不出馬を伝える街頭テレビ=3日夕
菅首相の自民党総裁選不出馬を伝える街頭テレビ=3日夕

 山陰中央新報のLINE(ライン)アカウント「さんいん特報班」に、菅義偉首相の退陣表明と次期総裁について、3~4日に意見を募ったところ、54件が寄せられた。退陣表明には、驚きのコメントが多数を占める一方、「当然」と冷静に受け止める声もあった。後手に回った新型コロナウイルスの感染対策に厳しい声が上がり、今後の提言や次期総裁への期待や注文も目立った。一部を紹介する。

<菅首相退陣>
 菅首相や派閥主導の総裁候補選びを繰り返す自民党へは厳しい意見が相次いだ。「コロナ対策が大変な時に政権浮揚をもくろんで、オリンピックを強行した」(松江市・70代女性)、「リーダーには力強さが必要。それが見られなかった」(東京都・40代男性)、「菅さんの辞任は仕方ないと思います。自らの言葉で国民にコロナ対策の協力を訴える姿勢が全く感じられなかった」(雲南市・60代男性)。菅首相が再三、指摘されてきた発信力不足に、リーダーとしての資質を欠くとの声は多かった。記者会見で何度も感染対策を訴えたが、原稿の棒読みが目立ち、国民の心に響かなかったようだ。

 松江市の60代男性は首相の様々な会見を見ていて、話し方の変化を感じていた。「コロナ対策での記者会見では死んだ魚のような生気のない眼でプロンプターを見つめながら、国民が期待する言葉が全くない原稿を棒読みしていましたが、政局になった途端ギラギラ燃えるような眼に変わり弁舌もしっかりしました」。今回の辞任表明の裏にも、次期総裁選や衆院選をにらんだ派閥同士の争いが見え隠れする。「確か前日までは総裁選に出馬と報道を見聞きしていたと思うのですが、この間に何があったのか。どんな力が働いたのか、とも勘ぐったり」(松江市・50代女性)。政策よりも政局に高揚する自民党の体質そのものへの批判も根強い。「派閥から総理を出すことばかり考えている自民党にはうんざりします。国民のことを考えて総裁になる人はいないのでしょうか?」(雲南市・64歳女性)。

 菅首相が推進したコロナ対策には、評価の声もあった。松江市の50代男性は「菅総理が突然辞任したことは残念。ワクチン接種や抗体カクテル療法によって、もうすぐ明かりは見えたのにと思う。東京オリパラがなんとか粛々と終了しつつあることも大きな功績だと思う」と評価する。出雲市の50代の女性は「やっても批判、やめても批判だと思います。総理(国)としての信念を貫くために、批判を全部背負って退任する役割を自ら引き受けているようにも思えます。経験したことのない困難の中、オリパラ実施の是非も、コロナ対策も、何が正しかったのか分かるのは、何十年も後になってからだと思います」と性急な評価を下す風潮に疑問を呈した

<コロナ対策>
 退陣表明への受け止めだけでなく、寄せられた意見には、進行中のコロナ対策への提言もあった。大田市の60代男性は「不要不急などと曖昧な表現をしないで、一定期間の完全シャットアウトも必要だと思います」と県外からの人の流れの抑制を法律や条例改正で厳しくする必要を指摘する。出雲市の74歳男性は、若い世代が希望を持てるよう「まず10代から30代の若い人の接種率を上げるために夜間接種等の対策を早急に始めていただきたい」と求めた。

 そして、経済との両立に向けて「まずワクチンの2回接種をきちんと進めること。その上でワクチンの接種証明(パスポート)を発効させ、それを持っている人は県域を越えた往来や複数人での会食も可能とする」(70歳代・益田市男性)、「未だ日本製のワクチンのワクチンは承認されていない、外国製に頼らざるえない状況の中で接種率を上げる為にワクチンパスポートは必要と思う」(70歳・松江市男性)など、ワクチンパスポートの有効活用を期待する声が上がった。

<次期総裁選>
 自民党内では今後、次のリーダーを選ぶ総裁選(17日告示、29日投開票)に向けた動きが加速化する。次期総裁については、地元山陰で、衆議院鳥取1区選出の石破茂元幹事長を挙げる声が最も多く、河野太郎行政改革担当相、岸田文雄前政調会長が続いた。

 石破氏を推す声では「忖度せず、かつ自分の意思を伝えながらもリーダーシップを取れる」(松江市・30代女性)、「誠実で嘘がない人ですから」(川本町・67歳男性)など人間性を挙げるほか、「山陰出身」(出雲市・40代女性)という率直な理由もあった。河野氏は「菅さんと違って原稿を棒読みするようなことはなく、自分の言葉で喋っておられる」(松江市・70代男性)、岸田氏は「広島出身者として核兵器禁止条約に前向きに取り組んでもらいたいとの期待から」(江津市・70代女性)などがあった。「世界をアッと言わせる」(大田市・60歳男性)と高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行の名前を挙げ、初の女性総理誕生を期待する声もあった。

 一方で「候補者も確定せず、岸田さん以外政策も出されていない中、このような意見聴取を行われることに疑問を感じます」(松江市・60代男性)と政策を議論すべき視点で、現段階での調査には否定的な指摘も。また「誰がなられても足を引っ張る方がおられます」(益田市・61歳女性)「正直なところ誰が立とうと同じ」(出雲市・47歳男性)と、特定の議員を挙げない回答も目立った。

 総裁像にも注文が入る。「弱者の立場に立てる人、えこひいきしない人」(松江市・50歳代男性)「人事を一掃して新しい新鮮な風を入れてくれる人」(出雲市・50代女性)。国民を失望させず、対コロナという国難に立ち向かうためにも、総裁選では、数の論理など内向きの争いではなく、正々堂々とした政策論争こそ求められていることは間違いない。