簡素で力強い作風が特徴的な河井寛次郎の作品=益田市有明町、島根県立石見美術館
簡素で力強い作風が特徴的な河井寛次郎の作品=益田市有明町、島根県立石見美術館

 安来市出身の陶芸家・河井寛次郎(1890~1966年)の業績を回顧する企画展「河井寛次郎と島根の民藝(みんげい)」(山陰中央新報社など主催)が11日、益田市有明町の島根県立石見美術館で開幕する。10日は内覧会があり、来場者約40人がぬくもりを感じさせる作品に見入った。

 河井は大工の棟りょうの家に生まれ、東京高等工業学校(現東京工業大学)窯業科で焼き物について学び、京都を拠点に30代前半までは中国・宋や朝鮮の古陶磁を研究した成果を基に技巧的な作品を制作した。

 1926年、工業学校の下級生だった陶芸家の浜田庄司を通じて知り合った宗教哲学者・柳宗悦らとともに民芸運動を興した。生活の中で活用される器に美を見いだし、簡素で力強い作風となった。戦後から晩年にかけては使うことを考えた焼き物から離れ、自由な形の作品を作り出した。

 展示作品約160点のうち半数が河井の作品。釉薬(ゆうやく)を巧みに使った「草花図鉢」や「海鼠(なまこ)釉五角食籠(じきろう)」が目を引く。柳が絶賛した喜阿弥焼(益田市、現在は廃窯)の土瓶も展示されている。担当の角野広海学芸員(28)は「河井の作品をはじめとする島根の手仕事のぬくもりを感じてほしい」と話した。

 会期は11月1日まで。開館時間は午前9時半~午後6時(入場午後5時半まで)。毎週火曜日休館。観覧料は一般千円、大学生600円、小中高生300円で未就学児無料。 (中山竜一)