ハーンの原文を解説する嶌根武宏さん=松江市雑賀町、雑賀公民館
ハーンの原文を解説する嶌根武宏さん=松江市雑賀町、雑賀公民館

 松江市雑賀町の雑賀公民館で開かれている、小泉八雲の作品を題材にした英語教室「ラフカディオ・ハーンの原文を読む会」が人気を集めている。講師は12月で90歳を迎える男性。英語教師だった経験を生かし、八雲作品の美しさを伝える。子ども向けのイベントも計画しており、卒寿の勢いはとまらない。 

 男性は千葉県出身の嶌根(しまね)武宏さん(89)。中学校の教師を定年退職した後、自宅で子ども向け英語教室を開いたり、趣味の水彩画を描いたりして過ごした。6年前、穏やかな老後を送ろうと、妻の陽子さん(82)の実家がある松江にIターンした。

 教師時代に、小泉八雲の「狢(むじな)」を教えた経験が印象に残っていた。八雲が松江に1年3カ月滞在したことを知り、八雲作品を原文で読むと、「とても面白く、松江の人たちにも知ってほしい」と、2017年9月に教室を始めた。

 教室は月に2回、嶌根さんが用意したテキストを用い、単語一つ一つを区切りながら読み解く。60~80代の7人が学んでおり、「おしどり」、「雪女」など10作品以上を読んできた。

 人気を集めるもう一つの理由が授業の合間にする嶌根さんの雑談コーナーだ。古事記、和歌、文学、政治、哲学などさまざまな分野の専門家の資料を使って解説したり意見を交換したりする。

 参加する小林啓子さん(73)=松江市竪町=は「松江に住んでいながら小泉八雲をよく知らなかった。講義は物語の情景や美しさを感じることができる。博識な先生の話も勉強になり、楽しい」と話す。

 小泉八雲記念館(松江市奥谷町)に通い、八雲の研究に余念がない嶌根さんは「週末に子どもの英語相談室をやってみたい。若い人に八雲に関心を持ってもらい、原文の美しさを味わってほしい」と、新たな目標を立てている。