第49回衆院選が19日、公示され、31日の投開票日に向けて選挙戦が正式にスタートする。4年ぶりに政権の枠組みを選択できる機会である。日本の進むべき方向を決めるのは主権者たる国民であることを示すため、棄権することなく貴重な1票を投じたい。

 公示に先立ち日本記者クラブ主催の9党党首による討論会が開かれた。新型コロナウイルス禍からの経済再建策を中心に多岐に及んだテーマでは、方針の明示を避けたり、実現性に疑問符が付いたりする発言もあった。選挙戦の中で公約や各党、各候補者の主張の吟味が求められよう。

 国政選挙では近年、低投票率が続いている。衆院選を真の政権選択選挙にするため、与野党は政策の訴えに加え、投票率向上にも真剣に取り組む必要があろう。

 現行憲法下では1990年衆院選を最後に投票率が70%に届いていない。過去3回で見ると、自民党が政権を奪還した2012年は60%を下回り、14年と17年は50%台前半まで落ち込んだ。この間、16年参院選から「18歳選挙権」が適用されたが、18、19歳の投票率は国政選挙のたびに低下。直近の19年参院選は30%台前半だった。近い将来、国の中核世代となる若年層の「選挙離れ」は深刻だ。

 民主主義の大本は、有権者が等しく投票できる選挙である。なのに投票所へ足を運ばないのはなぜか。自民党総裁の岸田文雄首相は内閣発足時の記者会見で「政治不信もあると思う」と指摘し、「国民の信頼感を取り戻し、投票率にも影響させていきたい」と語った。

 認識として間違ってはいないが、首相指名を受けた先の国会は、所信表明演説と代表質問だけで済ましてしまった。これでは政治不信解消による投票率向上は望めない。「民主主義が危機にひんしている」という首相の言葉をそのまま返さざるを得ないだろう。

 いったん多数を握れば、4年間は政権政党の座にいられる可能性がある。安倍晋三首相時代には財務省の公文書改ざんや森友・加計学園問題、菅義偉首相の下では総務省官僚の接待問題などが起きたが、自民、公明両党の連立政権は維持された。

 前回17年の衆院選で安倍自民党が大勝したからである。国民の「信任」を得たと言い張ることができたため、独善的な政権運営に拍車が掛かった面は否定できない。

 しかし、ほぼ2人に1人が投票しなかった選挙で、本当に「信任」が与えられたことになるのか。小選挙区制の弊害でもあるが、50%足らずだった自民党の得票率から計算すると、全有権者の4分の1程度の支持しか受けていないことになる。

 低投票率は立憲民主党など野党が選択肢にならなかったことも要因だ。責任の重さは与党以上かもしれない。

 今回、野党陣営は289小選挙区のうち約220選挙区で事実上の統一候補を擁立する。安倍・菅政権の下で9年近くにわたった「自民1強」政治を転換させたいのであれば、投票で主権者としての意思を表明するしかない。

 岸田政権による「政治の安定」を重視するにしても、棄権は避けて投票率を高めて民主主義立て直しの一歩としたい。そのためには、若年層による投票が不可欠であることは言うまでもない。