子どもに対して「早くしなさい」「置いて行くよ」といった言葉を投げ掛ける―。独身時代の私はそんな場面に出くわすと「そんな言い方しなくてもいいのに」「私が親になったら絶対あんな言い方はしないようにしよう」と、思っていた。まさか自分が全く同じせりふを口にすることになるなんて、当時の私には信じられないかもしれない。

 2歳の娘は公園やスーパーのお菓子コーナー、小児科の遊べるスペース、書店の音が鳴る絵本売り場などで立ち止まると、動かなくなる。「○ちゃん、ほら、もう行くよ」と優しく声を掛けても、効き目はない。「もう○時だ、帰らんと」「早く帰らんとご飯が作れなくなるよ」「おなかすいたでしょう、行こうよ」。大人の都合を説明しても完全無視だ。10分、20分と時間は経過する。

 最後は「じゃあ、もうお母ちゃん先帰るわ」「○ちゃん1人でここでねんねする?」といった「脅し」しか浮かばなくなる。情けないが、これ以外の方法が見つからない。

 育児書を開くとこのような場面では「あと○回遊んだら帰ろう」「時計の針がここに来たら帰るよ」と具体的に伝える▽帰りたくない気持ちを受け止める▽事前に約束する―といったアドバイスがある。しかし実践してもわが子にはのれんに腕押しで、むなしさが募るばかりだ。

 強制的に抱きかかえて動かしても、泣き叫んだり暴れたりする。周囲の目が気になるし、自分の体力にも限界があるので、なるべく穏便に済ませたい。こうなることが分かっているので、なるべく外へ連れ出したくないが、そういうわけにもいかない。

 そういえば、子どものころよく母親が「も~」と怒っているのを、「いっつも牛みたいにもーもー言ってる」と笑っていたが、今の自分も口を開けば「も~」とプリプリ怒っている。言うたびに、昔の自分に笑われている気持ちになる。

 だが、こちらにも言い分はある。「も~」以外の言葉では表せない気持ちがこの世にはあるのだ! それを知ったのは、親になってから。まだまだ知らないことはあるのだなと痛感する。