通勤の道沿いには神社が多く、この時期は秋祭りを知らせる大きなのぼりが目に入る。昨今のウイルス事情で中止となる行事が多い中、普段の営みがあることがうれしく、ありがたい▼思い出す会話がある。2年前、出雲市の神社の秋祭りに参列した。山裾にある神社の階段を氏子が続々と祝意を口にしながら上ってくる。祖父らしき男性におぶわれた幼い女の子が「なんでおめでとうなの」と尋ねた。「今日は神様にお願いを聞いてもらえる日だから、みんながおめでとうって言っているんだよ」▼分かったような分からないような顔ながら、にぎやかな雰囲気の中、祖父の背中で聞いた言葉は心地よく響いたはずだ。思えば、目に見えないものや自然に感謝する教えの多くは、祖父母から伝えられた。秋祭りののぼりに安心するのは、世代が離れた古老たちの教えが息づいていたからかもしれない▼吉備国際大の高橋淳教授は「免疫は祭りで作られる」という仮説を立てる。ウイルス排せつ量の少ない感染者に暴露すると軽症で済み、免疫ができる仕組みを使って集団免疫を作り上げる機能を、祭りは備えているとの理論だ▼古来、疫病への対処として発達した側面が祭りにはあり、祖先の知恵ではないかという。仮説の立証は気長に待つとして、自粛が求められる今の社会で「密」を避けるのが必須ならば、通勤中、秋の恵みにひっそりと感謝する。(衣)