米やレトルト食品が詰まった「フードバンク あったか元気便」。困窮世帯の支えになっている。
米やレトルト食品が詰まった「フードバンク あったか元気便」。困窮世帯の支えになっている。

 新型コロナウイルスの感染拡大が母子家庭の暮らしを直撃する。山陰では島根約7100、鳥取約5700世帯が居住。島根県は年間の就労収入を調査(2018年)しており、100万~150万円の世帯が20%を占め最も多い。衆院選の各党公約には、児童扶養手当の拡充、給付金支給などの低所得対策が並ぶが、改善に結びつくのか。山陰のシングルマザーの厳しい現実を取材した。 (大迫由佳理)

 昨秋離婚した出雲市内の女性(34)は、中学生の娘2人を養うため、週6日、飲食店でパートとして働き、このうち4日は、居酒屋でのアルバイトを掛け持つ。月収は約10万円。コロナによる勤務先の休業や時短営業が影響し、2020年の所得は、130万円だった。

 子ども2人で月額2万円の児童手当と、ひとり親家庭に支給される月額5万1千円の児童扶養手当が頼りだ。ただ、支給は月ごとではなく、一定期間分を一括して支払われるため、支給がない4、8、12月は特に苦しい。

 職を探すにも資格がなく、収入面などの条件に合う仕事は簡単には見つからない。「求めているのは子どもの明るい未来だが、食べることで必死の毎日。進学してほしいけれど、貯金ができない」と話す。

 独立して踏ん張ってきた女性にも、容赦なくコロナの影響が及んだ。

▽食糧支援が命綱

 松江市内でスナックを経営する女性(52)は昨年生命保険を解約し、現金を工面した。コロナ禍で経営環境が一変。客足は鈍く、賃料23万円や従業員の給与、光熱費を支払えば、毎月の収支はマイナスが走る。

 10年前に離婚し、専門学校生と中学生の息子2人を育てながら店を切り盛りしてきた。10年前に新築した月10万円の住宅ローンが重くのしかかり、貯金も底を尽きかけている。

 家族の「命綱」となっているのは、松江市の民間団体「フードバンクしまね あったか元気便」という無料の宅配食料支援だ。米、レトルト食品、お菓子が入った段ボール箱が届くと、食べ盛りの次男が喜ぶ。

▽不安定さ際立つ

 16年の国の調査では、母親と未婚の20歳以下の子どもだけの世帯は全国に約76万あり、母子家庭の年間平均所得は243万円。同じひとり親でも男性は1・7倍余りの420万円の所得があり、母子家庭の不安定さが際立つ。

 島根大法文学部の片岡佳美教授(社会学)は「現状の社会は男性が稼ぎ、女性が家庭で支える構造。そのバランスが崩れた母子家庭は社会構造のひずみの象徴であり、コロナでよりあらわになった」と指摘する。

 フードバンクしまねを運営する事務局の須田敬一事務局次長(69)は、多くのシングルマザーの苦悩に直面し、複合的な支援の必要性を実感する。

 「経済支援のほか非正規雇用の環境改善が不可欠。何より、ひとり親を地域から孤立させないことだ」