衆院選と合わせて行われる「最高裁裁判官の国民審査」の在り方に、疑問の声がくすぶる。もともと、最高裁裁判官になじみが薄い上、適任者かどうか判断材料が乏しく、有権者は「判断できない」と困惑。白票を投じると、信任したことになるという仕組みすら十分に知られておらず、識者は「チェック機能を果たせない」と改善を求める。

 28日、松江市内で国民審査の期日前投票を済ませた男子大学院生(22)は「とりあえず判断してみてください、と問われた気持ち」と釈然としない様子だった。今回の審査対象は11人。有権者宅には経歴や信念、関わった裁判を記した「国民審査公報」が届くが、無職男性(77)は「とても覚えきれない。どう判断していいか、分からん」と苦笑い。2人とも、白票を投じたという。

 国民審査は、辞めさせたい裁判官の欄に「×」印を付ける。×以外は無効。何も書かなければ信任と見なされる。裁判官は就任後と審査から10年経過後の衆院選のたび審査を受け、×印が有効投票の過半数になった裁判官は罷免される。

 司法権に民意を反映させるのが狙いだが、あり方には同じ法曹界からも形骸化を指摘する声が上がる。

 島根県弁護士会所属の若手弁護士の1人は「判断材料になる情報がしっかりと提供されていない。裁判所監視のフィクションと言わざるを得ない」と厳しい。

 実際、1949年の開始以来、罷免の例はない。

 白票が信任と見なされることが有権者によく知られていないと問題視するのは、三宅孝之島根大名誉教授(刑事法)。「『分からない』につけ込んで信任を得るシステム」と非難し、運用の改善を求める。 (多賀芳文)