サロンで相談を受ける井上恵理子さん(右)=出雲市内
サロンで相談を受ける井上恵理子さん(右)=出雲市内

 家族の介護や家事に追われる18歳未満の子ども「ヤングケアラー」が学業や仕事を犠牲にして苦しんでいる。新たな課題として国が調査に乗り出し、衆院選でも各党が対策を掲げた。認知度はまだ低く、孤立し潜在化する例が多い。周囲の理解とともに、支援体制の構築が求められる。 (報道部・森みずき)

 島根県東部で民生児童委員を務める女性は、近所の10代後半の女子専門学校生がヤングケアラーだと気付いた。

 昨年、生活困窮者への資金貸付制度の手続きで自宅を訪ねた際、幼い妹の世話をする姿を見たのがきっかけ。その後も見る限り、いつも家に居て、学校に通う様子がない。両親は共働きで、祖母は認知症。「親は親で一生懸命だが、あの子がいないと家族が成り立たない」と心配する。

▽部活やめたい
 鳥取県の実態調査(約1600人)では小学5年の1・8%、中学2年の2・0%、高校2年の3・2%が「自分がヤングケアラーに当てはまる」と回答。20代前後の「若者ケアラー」も5・1%いた。

 県と連携して来年2月まで相談窓口を設ける訪問介護サービス業のNKCナーシングコアコーポレーション(米子市)には「介護と学業の両立のため部活動をやめたい」といった深刻な声も寄せられる。

 同社によると、家族の面倒を見るのは当たり前だと思って続けるうち重荷になり、学業や仕事の不振に追い込まれるのが実態。同じ境遇の人が周囲におらず、一人で悩みを抱えがち。幼い頃から自分がやることだと思い込んでしまい、助けを求める発想に至らないという。

 神戸貴子代表は「体調が悪そう、夕方に買い物をしているなど周囲の大人が『ヤングケアラーかもしれない』と気付き、声を掛けることが大切」と説く。

 島根県でも、島根大法文学部の宮本恭子教授(福祉経済論)らが7月に支援組織を設立するなど支援の動きは緒に就いたばかりだ。

▽励みが縛りに
 長年、苦しむ例もある。20代前半から十数年、視覚障害がある父と病気がちで入退院を繰り返す母の介護に追われる井上恵理子さん(39)=出雲市在住=は昨年、離職した。

 介護職場の正職員として働きながら昼休みを2時間もらい、帰宅して父の昼食を整え、病院の母を見舞う生活が続いた。休憩時間分を取り戻そうと残業し休日も出勤。無理がたたって体を壊し介護休業を取ると、職場に居づらくなった。

 周囲の「えりちゃんがいるから大丈夫ね」「えらいね」との言葉は当初、励みだったが、やがて自分を縛り苦しめるようになった。

 パートタイマーの介護職として新たな職場で再出発した今、長らく一人で悩んだ経験から、当事者同士が話せる場として月例のサロンを企画。23日に初回を開き、若者ケアラーだった同年代の女性1人を迎えた。

 井上さんは、友人に野球観戦に誘われて自分のための時間の大切さに気付き、親戚に食事の手伝いを頼めるようになった体験を明かした。「人生にいろんな選択肢があったのに、できないまま40歳が迫る。同じように苦しむ人に、そうなってほしくない」との願いは切実だ。