4年ぶりの政権選択選挙となった第49回衆院選は、自民党が単独で過半数を維持し、公明党との連立政権が継続することになった。

 岸田文雄首相は「信任をいただいた」と強調したが、安倍、菅両政権下で国会を軽視し続けた「自民1強」政治の踏襲まで有権者が容認したわけではあるまい。自民党の議席減や投票率低迷からもうかがえる。

 首相が訴えてきた「丁寧で寛容な政治」を実行し、誠実で謙虚な政権運営を行うことが、「岸田政治」の真の信任につながると肝に銘ずるべきだ。

 就任から1カ月足らずの岸田首相は内政、外交とも評価に値する実績を残していない。立憲民主党など野党が要求した臨時国会の召集より、自民党総裁選を優先したため、国会論戦も不十分なまま終わってしまった。

 総裁選の勢いで衆院選を乗り切ろうとした党利党略が働いたことは否めない。それでも自民党は259議席と公示前から17議席減らした。岸田首相の下でも「数の力」をかさに着た政権運営が続くことを危惧した有権者がいたからだろう。

 7割を超す小選挙区で統一候補を擁立した立民など野党陣営は、自民党の甘利明幹事長や現職閣僚を破り、一定の成果は出した。しかし、立民は政党の地力が表れる比例代表の大幅後退が響き、小選挙区との合計で96議席と公示前を14議席下回った。党執行部は政権交代に遠く及ばなかった要因を分析し、共産党などとの選挙協力の在り方も再検討する必要があろう。

 野党共闘と一線を画しながら、岸田政権とは距離を置く日本維新の会は公示前の4倍に近い41議席に躍進した。共産と接近した立民に加え、自民の改革姿勢に不満を持つ有権者の受け皿になった形だ。

 衆院選を受けて岸田首相がまず取り組むべきなのは、新型コロナウイルス感染症の「第6波」対策と国民生活再建のための経済対策である。自民は衆院選公約でいずれも最重要課題に挙げ、首相も選挙後の記者会見で言及したが、具体性に欠ける部分が残っている。

 首相が重視していたはずの「分配」を実現するための「成長」戦略も曖昧なままだ。早急に肉付けを図る必要があるが、政策決定での独善を避けるべきなのは言うまでもない。

 野党各党もコロナや経済対策で独自の公約を掲げてきた。原発・エネルギー、社会保障、ジェンダー平等などの問題でも政府、与党とは異なる政策を打ち出した。

 岸田首相は野党の背後に、支持した有権者がいることを心に刻み、国会論議を尽くさねばならない。「聞く力」が自民党内向けだったとの疑念が強まれば、来年夏の参院選に向けて民意の離反が始まるだろう。

 安倍、菅両政権の「負の遺産」の清算も欠かせない。財務省の公文書改ざんや桜を見る会問題の全容は未解明なままだ。再調査に否定的な態度を改めてこそ、岸田政権への信任は高まるはずだ。

 今回の衆院選の投票率は55%超で、4回連続で50%台の低水準にとどまった。投票率の低迷は議会制民主主義の形骸化を招きかねず、与野党とも危機感を持つべきだ。

 同時に有権者も棄権は、時の政権への「白紙委任」になることを自覚したい。与野党の取り組みを引き続きチェックし、次の審判に備えよう。