立憲民主党の枝野幸男代表が衆院選敗北の責任を取り辞任を表明した。新型コロナウイルス対応を巡る自公政権の迷走や、長年にわたった安倍・菅政治への有権者の不信・不満が鬱積(うっせき)している中で立民はチャンスを生かせず、公示前勢力を大きく減らし100議席を割り込んだ。

 4年の任期いっぱいの準備期間を与えられた言い訳のできない決戦に、政権交代はおろか、与野党伯仲の状況すらつくれなかったのだから党首交代はやむを得まい。

 これを機に、立民は枝野氏が推進した野党共闘路線を検証し、敗因を徹底的に分析した上で戦略を練り直すことが必要だ。新体制で抜本的な出直しを図ってもらいたい。

 立民は今回の衆院選で、共産、社民、れいわ新選組の3党と共通政策に合意し、国民民主党とも連合が仲介する形で候補者を調整。289の小選挙区のうち213で5野党の候補を一本化した。

 確かに、枝野氏が「多くの選挙区で与党候補と接戦に持ち込めた」と振り返るように、与党に対峙(たいじ)する足がかりはできたかもしれない。だが、共産票が上積みされる一方で、逃げていく票があったこと、政権批判票を日本維新の会に取り込まれたことも注視すべきだろう。何よりも最後に競り負け、一本化選挙区で59勝しかできなかった現実を重く受け止めなければならない。

 欠けていたものは、政策力と組織力の二つ、一言で表せば「地力」ではないか。東日本大震災対応がもたついた旧民主党政権と同じように、自公政権がコロナ対応で失態を演じながらも踏みとどまったのは、強固な地方組織を基盤としているからだ。地方議員を増やし組織を強化する、政策を磨き、それを浸透させていく。接戦を制するには、足腰を鍛えるという日頃の地道な活動がいかに大切かを物語っている。

 党勢を示す比例代表票は全国で1100万票台と、希望の党と分かれて戦った4年前から微増した程度だ。出口調査によると、無党派層の比例代表の投票行動は、立民が24%でトップだが、維新(20%)に迫られた。

 立民執行部はこの1年半余り、コロナ対応で安倍晋三元首相、菅義偉前首相の言葉が国民の心に響いていないと批判した。ならば、選挙戦を通じた枝野氏らの発信が有権者の心をつかんだのか。55%余りに終わった低投票率がその答えで、無党派層の攻略も十分とは言い難かった。

 大躍進を果たした維新が、大阪府政・市政を担い、「維新の統治」を実践していることに学ぶ点は少なくない。特にコロナ対応では、一時事実上の医療崩壊を招いたとはいえ、吉村洋文知事が連日テレビに登場して「大阪モデル」として態勢を再構築した効果は大きかった。相乗りではなく、各地で自前の首長をつくり、有権者に立民の統治の姿を実感してもらうことにも積極的に挑戦すべきだろう。

 「無敗」で知られる小沢一郎、中村喜四郎両氏が選挙区で敗北、党の顔でもあった辻元清美副代表は比例代表でも復活できなかった。立民にも世代交代の波が押し寄せている証左であり、新しい政治リーダーの育成は急務と言える。

 参院選まで8カ月。政治の場に緊張感を取り戻すには、強い野党第1党が不可欠だ。立て直しに残された時間は少ない。