利害の対立は仕方ない面もあるが、どこで互いに折り合えるか知恵を絞らなければ、状況はさらに悪化する恐れもある。日本を含めた消費国は結束し、産油国との対話を拡充するなど安定供給のための戦略を強化しなければならない。
原油相場の上昇に危機感を強める消費国が増産を要求する中、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の産油国でつくる「OPECプラス」は追加増産を見送った。
事前にOPECの盟主サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相が増産に否定的な見解を示し、市場は増産見送りを織り込んでいただけに、相場は荒れることはなかったが、高値圏にとどまっていることには変わりはない。
日々、多少の上下はあるだろうが、供給不足を背景に相場基調が上昇傾向にあることは間違いないだろう。
ガソリンや灯油などの燃料、プラスチックなど原油由来の原材料などの値上がりは既に日常生活や企業活動に大きな悪影響を及ぼしているが、冬本番を迎える中、これがさらに加速する恐れがある。
政府は農漁業や輸送業向けなどの支援策を確実に実施し、必要に応じ拡充することも視野に対応を急がなければならない。特に新型コロナウイルス禍で圧迫を受けている業者などに対しては細かい目配りが欠かせない。
産油国は原油をできるだけ高く売りたい。消費国は安く買いたい。しかし、価格が高すぎたり、安すぎたりすれば、一方の側に負担が集中し、産油国と消費国の関係は不安定になる。
一見、交差することがないように見える互いの立場だが、安定した持続的な取引の重要性では一致できるのではないか。
今回、産油国側はコロナ禍の収束が見通せず、需要回復に自信が持てなかった。消費国側は経済活動再開に伴う足元の需要拡大への対応を求めた。両者の間で、コロナ禍の現在の状況と将来見通しに世界経済の分析も加味した情報交換を実施することができれば、妥協点を探る出発点になり得る。
「OPECプラス」の次回の閣僚会合は12月2日だ。日米を核とした消費国と産油国との対話の機会を設けることを検討する余地はあるだろう。
ジャンピエール米大統領副報道官は「(価格安定に向けて)あらゆる手段を検討している」と強調。日本と同様に増産を要望していた米国は、消費国の結束に反対する理由はないはずだ。
だが気になることもある。サウジのエネルギー相が日本からの増産要請を直接聞いてないと明らかにしたことだ。政策として決定した事項を相手国の担当閣僚に確実に伝えることは基本だ。萩生田光一経済産業相は「伝達したことは確認している」と述べたが、当の本人が聞いていないと言っている以上、何らかの不手際があったと考えざるを得ない。気を引き締めてかかってほしい。
ちょうど今、英国のグラスゴーで国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開かれている。化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトは産油国にとっては非常に厳しい試練に違いない。産油国にとっては原油依存経済からの転換が急務だ。これを消費国が支援することも、相場安定に寄与するはずだ。