構想や計画が持ち上がりながら鉄路の開通に至らなかった「未成線」。近年、放置された遺構に興味を持つ人が増えてきた。先日、浜田市内で開かれた第3回未成線サミットには廃線も含め6団体が参加し、活性化策を探った▼未成線の中でも同市の金城、旭両町を中心に残る広浜鉄道今福線の存在は突出している。戦争で断念した旧線(1933年着工、40年中断)、国鉄の財政悪化で中止になった新線(69年着工、80年中断)と2度の工事は15カ所以上もの橋りょうやトンネルを残した。用地は農道や駐車場になり山村風景に同化している▼ダイナミックなアーチ橋に注目したのが、紀行『時刻表2万キロ』で有名な故宮脇俊三氏。住民に忘れられた遺構を『鉄道廃線跡を歩く5』(98年)の表紙にした。書店で見つけて衝撃を受けた地元の元小学校長石本恒夫さん(93)が遺構を調べ始めたのが、「今福線ガイドの会」(24人)や今日の未成線観光につながった▼高齢のため欠席した石本さんに代わり、山本久志副会長が「期待を2度も裏切られた地元民の残念、無念の思いを伝えたい」と、石本さんの活動理念を訴えた▼浜田|広島間を最速55分で結ぶ鉄道構想は夢に終わった。それから40年がたち、時代は脱炭素化に向かう。周辺のレギュラーガソリンは1リットル170円を超える。巨費を投じた未成線を捨て、自動車を優位にした交通政策は正しかったのか。(釜)