落語家の立川談志さんが亡くなって昨日で10年になった。印象に残っているのは、生前に放送されたNHKのドキュメンタリー番組での発言。その当時、新潟県に田んぼを持ち、地元の農家の人らと稲刈りを終えた談志さんが話しだす。「ああいう人たちが得たお金と株式という机の上で得たやつ(お金)は、お札の色を分けないといけないと思いますねぇ」▼「反逆児」と評されたその発想に驚き、納得もした。既に顕在化していた、額に汗して働くよりも株の売買などで稼ごうとする風潮に憤りを感じていたのだろう。さらに「こっちで稼いだやつは3倍に使えるけど、机の上でやったのは3分の1か5分の1しか価値がないというふうに決めてしかるべしだ」と▼談志さんが言うようにお札の色を分けたり、価値に差をつけたりするのは実際には無理でも、額に汗した労働の対価と金融所得の価値を、せめて税制で調整できないのかと思う▼岸田文雄首相が自民党総裁選の際に口にした金融所得課税の強化は、その第一歩になっただろうにトーンダウンしてしまった。金融所得の割合は富裕層ほど高く、所得総額が1億円を超えると所得税の負担率も下がる。これでは額に汗して働く者には納得しづらい▼この先も株式の売買など机の上で稼ぐ人たちばかりが増えていけば、世の中の歯車が回っていくかどうか。ちょうど明日は「勤労感謝の日」だ。(己)