政治家の「出身地」の使い方に常々、違和感を覚えている。政治の世界では原則、選挙区を出身地と表現するようだが、一般の感覚だと、その土地で長らく暮らし、苦楽を分かち合ってきたかのように聞こえてしまうからだ▼岸田文雄首相は10月の就任会見で「被爆地広島出身の総理大臣として『核兵器のない世界』に向けて全力を尽くしたい」と語った。だが、本人は東京生まれで、永田町小学校、麹町中学校、開成高校、早稲田大で学んだ〝東京人〟。当選を重ねる広島1区は衆院議員だった父の地盤を譲り受けた▼政治家一族に生まれた安倍晋三元首相も東京生まれ東京育ち。山口4区の選出と言ってくれればすっきりするものの、「山口出身の国会議員」と自称する。疲弊する田舎で歯を食いしばる仲間の顔が浮かんでもいいはずだが、自身が過去に看板政策に掲げた地方創生より憲法改正にご執心の様子だ▼岸田氏に対しては首相就任後も核兵器禁止条約に背を向けたままで被爆者から不満の声が相次ぐ。信念を持って仕事をしてくれるならどんな経歴でも構わないが、ことさら出身地を強調して期待をあおるならば裏切ることなくやり遂げてほしい▼2000年以降の首相は11人。出身地(選挙区)は違えど6人が都内の高校を卒業した世襲議員だ。地方軽視の政治の根っこがこんなところにも垣間見えると考えるのは少々勘繰り過ぎだろうか。(文)