彼の活躍を見ていると、目標は人間の能力を伸ばす礎なのだとつくづく思う。今季投打の「二刀流」で米大リーグを席巻したエンゼルスの大谷翔平選手。ついにアメリカン・リーグの最優秀選手(MVP)に輝いた▼原点は岩手・花巻東高1年時に書いた「マンダラチャート」と呼ばれる目標達成シートにある。「9×9」の81マスの真ん中に目標を書き、それを達成するために必要な要素を周りの8マスに、さらに8要素を得るために必要な行動目標を8個ずつ書き込む▼大谷選手が真ん中に書き込んだのが「ドラフト1位8球団」。その周りに「球速160キロ」「変化球」「コントロール」「キレ」「体づくり」「メンタル」「人間性」「運」|の8要素を挙げ、それぞれに必要な行動を8個ずつ書き込んだ。そこに「ごみ拾い」もあった▼真ん中の目標は、高校の3年先輩で現在マリナーズで活躍する菊池雄星投手が6球団競合の末に西武へ入団したのを受け、それを上回ろうとしたため▼大谷選手は高校時代にこう語っていたという。「目標のレベルが高くなれば、野球のレベルは高くなると思うんです。160キロを出せば、次に160キロ以上を目指す人が増えてくるじゃないですか」。新人で242安打を放ったイチローさん以来、20年ぶりの日本人MVP。はるかな高みながら、それを上回る目標を掲げる選手の出現で日本のレベルは高くなる。(健)