第一章 水引の母(36)

「野(の)呂(ろ)っち……」

 麻(ま)世(よ)ちゃんに肩をたたかれ、我に返る。

「もう……」

 麻世ちゃんが首を左右に振った。

「野呂先生、それで十分だ」...