空気の成分は窒素が8割近くに酸素が約2割と習った。わずかだがアルゴンと二酸化炭素なども含まれている。女性作家で、直木賞も受賞した木内昇(のぼり)さんが以前、似た考え方で自分が新社会人だった頃に感じた世の中の成分比率を紹介していた。参考にして考えてみるのも一興だ▼約30年前に出版社に入った木内さんは、しばらくは<世の中は5割の理不尽と4割の不可解、1割の正義で成っている、と思っていた>と振り返っている。右も左も分からないまま配属された部署で「言われてないこと」や「聞いてない指示」に戸惑ったからだ▼しかし仕事の基本を身に付け、自分なりのやり方が分かるようになると徐々に割合が変化。正義が通るようになっていったそうだ。昔と違い今は、大卒の3割、高卒の4割が入社3年以内に離職する時代。理不尽の割合は減っていると思うが、成分の要素は変わらない気がする▼新型コロナウイルスの影響で今年も変則的な対応を迫られる新年度が始まった。昨年に続き2度目とはいえ、社会人になったばかりの若者には不安や戸惑いもあろう。だが見方を変えれば、こうした試練はやがて貴重な経験になる▼これから手掛ける仕事も同じだ。一流のアスリートほど基礎練習を疎(おろそ)かにしないという。最初は単調に思えても、つまらない仕事はない。向き合い方と努力次第で、世の中の成分比率は変えられる。(己)