先日、99歳の祖母が亡くなった。祖母は長寿だったが、食わず眠らずに近いむちゃな生活に、喫煙という不摂生のわが身を振り返ると、祖母のような大往生は望めそうにない。死後に残る趣味の品々がどうなるのか、ふと気になった▼品々は、興味のない家族にとって、ごみの山でしかない。例えば200個ほどある戦闘機や戦車のプラモデル(未組み立て)、40個ほどあるレーシングカーのミニカー。インターネットオークションの相場で1万円程度の年代物や輸入物、限定品も含まれるが、妻や娘に聞くと「全部捨てる」と言う▼他にも、中学生の頃にはまった対話型ゲームのルールブックやシナリオが20冊ほど、ゲームブックも40冊ある。相場で5千円程度の希少品もあるのに、妻や娘はリサイクルショップに10円程度で売るのだろう▼ネットオークションでは、コレクターの遺品か、廃業店舗の在庫とみられる品を業者がたたき売るのにたびたび出合う。「死後、家族に捨てられると思うと、集めるのがむなしくなった」という悲痛な書き込みを目にしたこともある。人ごととは思えない▼ネットオークションの発達により、見ず知らずでも同好の士に引き取ってもらえる世の中になった。人生終盤を迎えた際の「終活」がクローズアップされているが、せめて生前に、品々の相場を記したエンディングノートを作っておくのもコレクターの務めか。(志)