小気味よいツッコミと、登場人物を見守る温かみある語り口が印象的だった。<後半へ続く><もっともな意見である>…。放送開始以来、31年にわたりテレビアニメ『ちびまる子ちゃん』のナレーションを務めたキートン山田さん(75)が、先週の放送をもって番組を卒業。声優・ナレーター業も引退した▼奇妙な芸名は、米国の喜劇役者バスター・キートンから取った。当時38歳。声優の仕事に行き詰まり「思い切ったことをしないと駄目になる」と、子どもや事務所の反対を押し切って改名した。運命を切り開くには、時に大胆な行動も必要なのだろう。原作者さくらももこさんの”耳に留まった”のは、5年後のこと▼意外にも自分の間が作りづらいナレーションに苦手意識があるそうだ。だからこそ「何とかしようという思いで満足できなかったことが、長く続けられた秘訣(ひけつ)かな」▼75歳での引退は10年前から決めていたという。生涯現役にこだわる人もいるが「人生の後片付けを元気なうちにしようと思った」。<後半へ続く>人生は静岡の自宅で断捨離をしながら野菜作りに励むらしい▼『サザエさん』のマスオ役を41年間も担当し、優しい語り口が人気だった増岡弘さんが83歳で亡くなったのが1年前。増岡さんに続き日曜夕方の癒やし声がなくなるのを残念がるファンは多いだろう。世知辛い世の中だけに、”キートン節”がはや恋しい。(健)