北京冬季五輪の開幕を目前にした中国はきょう、旧暦の正月「春節」(今年は2月1日)に合わせた休暇に入る。例年なら故郷へ帰る人でごった返す映像が日本でも見られるが、新型コロナウイルスの影響で帰省や国内旅行が困難になっている▼コロナ対策は、五輪を成功に導く国家や指導者の威信が懸かっているだけに「政治案件」である。2019年末に世界で初めてウイルスが確認された当初から、ずっとそうだ▼地方の状況も同様かと思い、北京から約2600キロ離れた南西部にある雲南省の知人に春節休暇直前の状況を聞いた。地域での春節行事はあるものの、国境地域は封鎖政策を敷いて感染地域からの往来を制限しているため、観光業は打撃を受けているという▼健康食品やバイオ化学といった生物資源開発などと共に、観光業は省経済の重要な一角を占める。世界文化遺産として知られる「麗江古城」は日本人にも人気のスポット。30年前に訪ねた際、省都・昆明と上海を結ぶ国内線の機内で出雲弁が飛び交っていた。島根県民にも人気の地だった▼日中国交正常化50周年の今年、そんな場面が再来するだろうか。コロナ次第と知りつつ知人に尋ねると、「静待」という答えが返ってきた。中国で言う静待花開(花が開くのを静かに待つ)の一部。コロナの感染状況に加え、複雑な国際事情に生活が左右される国民感情の一端と受け止めた。(万)