10回目の「3・11」が過ぎた。8年前に福島第1原発を訪ねて以来、毎年この時期になると、一冊の本を読み返す。かつてのベストセラー『ゾウの時間ネズミの時間』(本川達雄著)だ▼この本のおかげで、哺乳類の寿命や心臓が打つ間隔など生理的時間は「体重の4分の1乗に比例する」ことを知った。知らなかった法則がもう一つ。動物のエネルギー消費量に当たる標準(基礎)代謝量は「体重の4分の3乗に比例する」そうだ。この法則を応用したエネルギー問題の視点が意外だった▼現代日本人の生活は、生命維持に必要な基礎代謝量の約2倍の熱量の食料供給に加え、エネルギー量がその数十倍になる、石油など大量の1次エネルギーの供給によって成り立っている。1人当たりの両方の合計の半分を、実態としての標準代謝量と見なして「ネズミ|ゾウ曲線」と呼ばれる計算値に当てはめると、何とゾウに匹敵する体重になるという▼技術革新に伴い高度成長期から急増したエネルギー消費の上では、日本はゾウ並みの巨大な生き物が1億2千万頭も暮らす国になった。将来、世界中が同様の生活になれば、地球上のゾウサイズの生き物は100億頭近くになる▼それでもなお、さらに速くて便利で快適な未来を目指すのか。それとも、そろそろ持続可能な「身の丈」を考えるべきか。気が付けばオール電化に近づいた日常の中で思案する。(己)