「人間は群衆の一員となるという事実だけで文明の階段をいくつも下ってしまう」。フランスの社会心理学者ル・ボンは古典的名著『群衆心理』でこう喝破した。
群衆は、会社や組織と言い換えても成り立つ。個人としては優秀なのに、集団で意思決定を図ろうとした時には考えられないほど愚かな決断を下す。フジテレビの一連の問題では経営陣による「集団浅慮」の弊害が指摘された。
福井県の前知事によるセクハラ問題もしかり。千通もの破廉恥なメールを送った前知事の行為は論外だが、気付いていながら止められなかった県庁という組織の責任は極めて重い。ただ、皮肉にも集団浅慮は結束力や一体感という同質性が高ければ高いほど加速する。年配女性職員の「昔はもっとひどいセクハラがあったけれど耐えてきた」との声は、知らず知らず組織に同化したことを物語る最たる例だろう。
では、どうすればいいのか。フジテレビ問題を追いかけているライターの古賀史健さんは近著で、日本人に欠けているのは「人権意識」ではなく「人権知識」で、相手を尊重する姿勢が必要だと投げかける。
選挙戦真っただ中の福井県知事選は県庁の組織改革が争点の一つとなっている。ル・ボンは集団が正しい方向に進めば大きく社会を変革するとも示唆した。強みとしてきた同質性を推進力に変え、「集団深慮」を巡らす組織に生まれ変わる契機にしたい。(玉)













