北京冬季五輪は一部競技の先行開始を受け、4日に開会式を迎える。イスラム教徒の少数民族ウイグル族に対する中国の人権侵害などを理由に、米国や英国、カナダなどがいち早く開会式に政府代表を送らない「外交ボイコット」を打ち出し、日本も同調を決めた。
この動きと時期を同じくして、新型コロナウイルスのオミクロン株による感染が世界で拡大した。大会は昨夏の東京夏季五輪と同様、一般市民へのチケット販売は取りやめとなり、観客がかなり少ない中での競技実施となりそうだ。
祝祭色あふれた大会とならないのは残念だが、選手が勝利の栄光を目指して競い合い、ライバル同士の敬意と友情が感じられる光景は、今回も他の国際大会とは比べものにならないほど多く誕生するのではないか。
そうした五輪の本質的な価値が詰まった熱戦は、国際政治もパンデミック(世界的大流行)も奪い去ることはできないと信じたい。
米国が主導した外交ボイコットは、中国の覇権主義的な姿勢に反対する意思を鮮明に打ち出したものだと受け止められている。香港で言論抑圧が進み、民主主義はどんどん後退している、との声が国際的に高まっている現状もこの行動の背景にあるのだろう。
北京大会は中国政府による典型的な国威発揚型の五輪だ。単なるスポーツと若者の祭典ではなく、国家の威信を前面に押し立て、政治色が極めて強い。
この特徴を見て取って、外交ボイコットは中国に大きな打撃となるはずだと、米国と同盟国は考えたのではないか。開催国が各国政府の代表を開会式に招待することは、国際オリンピック委員会(IOC)の権限外とはいえ、外交ボイコットが実現した大会として五輪の歴史に残るだろう。
オミクロン株の感染拡大の影響を最小限に抑えるため、厳重な態勢が整えられ、選手をはじめ大会関係者、メディアは東京五輪以上に多くのPCR検査を連日受けることが義務づけられている。
競技場をはじめ大会関係施設内の動線が外部と遮断される形で設けられている現状に、選手から強い不満が聞こえないのは、こうした環境に既にさまざまな国際大会で慣れているからだろう。
4年前の平昌(ピョンチャン)(韓国)五輪で、いずれも金メダルを獲得したスピードスケートの小平奈緒選手と高木美帆選手は、日本の女性アスリートを代表する存在になった。オランダや米国の強豪選手がその技術を習得する努力に励むようにもなった。
小平選手が4年前、宿敵であり同時に友人でもあった韓国の李相花(イサンファ)選手の背負った重圧を思いやり、レース後にその肩を抱いて健闘を祝福した場面は、大会での友情を象徴するシーンになった。今大会では高木選手と小平選手を祝福し、あるいは両選手と喜びを共にする外国勢を数多く目にするかもしれない。
五輪3連覇を目指す羽生結弦選手と世界選手権3連覇中のネーサン・チェン選手(米国)が対決するフィギュアスケート男子は世界中の注目を集めるに違いない。
東京五輪でスケートボード勢が活躍したように、日本のスノーボード選手は活躍が期待されている。若者の躍動が次世代の若者に夢を運ぶ。そんな五輪になってほしい。