国内で新型コロナウイルスの1日の感染者数が10万人に達した。過去に見られなかった急拡大で、医療逼迫(ひっぱく)も始まった。どこがピークなのか先が見えない中で、対策以前の問題として、検査不足により肝心の感染者数がつかめていない。即時的な感染動向の把握に全力を挙げるべきだ。
感染者数の伸びが一時より鈍化しているようにも見える。だが、それは検査や疫学調査が手いっぱいになった表れではないか、流行の実態が正しく見えていないのではないかと強く疑われる。
感染者数の伸びに検査数が追いつかず検査陽性率も極めて高い。検査待ち、保健所の連絡待ち、受診待ち、入院待ち…。コロナ対策のプロセスが目詰まりしている。保健所の人手不足で報告が遅れた大阪市のような不始末を繰り返してはならない。
言うまでもなく急拡大の主因はオミクロン株、特にその感染の速さにある。1人が感染してから人にうつすまでが従来株の約5日から2日程度に縮まり、このサイクルの短さが年明けの急激な感染拡大につながった。
オミクロン株は重症化率、致死率は低いというデータはあるが、インフルエンザ並みとの言説は短絡的だろう。各国では感染の速さが重症化リスクの低さを帳消しにし、医療逼迫による重症者・死者が増え、対策を緩めた幾つかの国では感染者数が下げ止まっている。
ワクチンを2回接種した人での感染が増えている。未接種の人、持病がある人、肥満の人などのリスク群では重症化も目立つ。感染から入院、重症化には時間差があり、病床が足りている地域、重症者が少ない地域でも油断できない。
子どもが感染しやすいのも特徴の一つだ。隔離は難しく、同居家族が次々に感染する例が後を絶たない。大人は勤めに出ることもできず、社会機能への影響も甚大だ。
ほかの医療への影響も看過できない。救急搬送が困難な事案が過去最多を更新し続けている。コロナ専用病床が増えた内実は病床の転用が大半で、現場の人手や資機材が増えたわけではない。
政府や自治体は、医療逼迫を避けつつ社会機能を維持する難しいかじ取りを迫られる。隔離期間の短縮など専門家の意見をいれて臨機応変に対応することは妥当だろう。
ただし、東京都がいったん設けた緊急事態宣言要請の検討基準を、その基準を超えてから新基準に改めたのは、政治への信頼を損ないかねず、リスクコミュニケーションとしても下策だ。基準を超えた時点で十分な説明がなされるべきだった。
何より政府の備えが遅れたのは痛恨だ。オミクロン株の感染速度は12月には知られていた。強化した入国検疫によって流行拡大までに約1カ月の余裕ができた。その間に検査の拡充やワクチン3回目接種の前倒し、軽症者への支援態勢づくりなど、やることは山積していたはずだが、動きがあまりに鈍かった。
現状は、医療機関が検査キットや薬の入手に苦労し、ワクチン3回目接種に至っては、1月末で人口の3・5%。国民の多くは接種券すら届かないありさまだ。遅きに失した感はあるが、新たな病原体を監視し、流行の兆しをいち早く、正確に捉える人的、物的な体制を強化したい。今後の備えとしても必須の課題である。