明治時代の日本による竹島周辺でのアシカ猟が海外に認知されていたことを示す史料の一部が、寄贈を受けた島根県隠岐の島町で所在不明になっている。2010年には既に紛失していたとの記録が残るが、町はこれまで公にはしていなかった。
所在不明なのは、1910(明治43)年に英国・ロンドンであった日英博覧会で、隠岐の竹島漁猟合資会社がアシカの皮で作ったかばんを出品して獲得した「銀メダル」。会社を設立した実業家・中井養三郎の三女が、86年に西郷町(当時)へ皮やかばんなどと共に寄贈し、町は95年に西郷港近くにオープンした「隠岐自然館」に展示した。
隠岐の島町によると、合併後の2010年に同町職員が調査した際、既に紛失したとする記録が残る。過去の担当者や自然館の管理委託先に聞き取りをしたが、なくなった時期や経緯は不明という。隠岐自然館は21年に開館した隠岐ジオゲートウェイに移転し、旧館は現在、空き施設の状態になっている。
銀メダルは、竹島周辺での組織的な漁猟が国際的に知られていたことを示す史料で、竹島のアシカ猟の歴史に詳しい鳥取大の井上貴央名誉教授は「隠岐の人と竹島とを結ぶ貴重な文化財の一つだ。保存や管理をきちんとすべき」と指摘した。
町の佐々木千明総務課長は「逸失した経緯は分かっておらず、申し訳ない。竹島関連史料の管理を徹底していく」と話した。
皮やかばんなどの革製品は、同町久見の久見竹島歴史館に近く、展示する予定にしている。 (森山郷雄)