2月5日にリニューアルした巨大迷路「ドラゴンメイズ」=雲南市大東町上佐世
2月5日にリニューアルした巨大迷路「ドラゴンメイズ」=雲南市大東町上佐世

 巨大迷路「ドラゴンメイズ」(雲南市大東町上佐世)が今月5日、リニューアルオープンした。迷路内にはユニークな仕掛けが施され、子どもだけでなく大人も楽しめ、人気テレビ番組に取り上げられたという。改良された巨大迷路に挑戦してみた。(Sデジ編集部・吉野仁士)
 

 巨大迷路は2007年、一般社団法人「心の駅 陽だまりの丘」が開設した。迷路の各所を巡ってスタンプラリーをしながら、ゴールを目指す。数百枚の板で区切られた迷路と、揺れる橋といった仕掛けを乗り越えながら、できるだけ短い時間でゴールできるかどうかが醍醐味。奇抜な仕掛けが面白いと、関西で人気のテレビ番組「探偵!ナイトスクープ」で取り上げられ、新型コロナウイルスの感染拡大前は全国から来場者が訪れた。

 ゴールに必要なスタンプの数で難易度が分けられ、初めての人にお薦めの「スタンダードコース」はスタンプを4個、慣れた人向けの「おろちコース」は7個を集める。迷路と聞けば子ども向けのような印象があるが、スタンダードコースですら、大人がゴールまでに30分以上掛かり、歩く距離は約5キロになる。

ドラゴンメイズはとても広いことで有名。タワーはすぐに視認できるが、そのまま簡単にたどり着けるほど甘くはない

 広さはサッカーコートとほぼ同じ7000平方メートル。今回のリニューアルで迷路内のコースを全面改変したほか、迷路内にオープン当初からあった、高さ20メートルのスギの木数本を、景観整備のために伐採した。明るく元気に楽しめるよう、迷路内に暖かい太陽の光が当たるように工夫した。春の時期、花粉症に悩む利用者が困らないように、との配慮もあるという。リニューアル工事には2カ月を掛けた。

 コースを考えた田中隆理事長(79)は「迷路はお客さんとの心理作戦。いかに相手の裏をかくかを考えながらコースを作る」とにやり。「詳しい話は迷路を攻略してから」と、スタンプラリー用のカードを手渡された。

 

 ▼記者がコース体験、目指すは30分以内

ドラゴンメイズのスタート地点。スタンプカードに時刻を打ち込み、迷路内で4~7個のスタンプを集めてゴールを目指す

 迷路の入り口には会社のタイムカードで時刻を打つレコーダーがあり、スタンプカードを差し込むとスタート時刻が記される。ゴール地点にもレコーダーがあり、ゴールまでに何分掛かったかが分かる仕組み。スタンダードコースは30分以内にゴールすれば、100円の割引券がもらえる。

 双方のコース用のカードを持ち、スタンプを4個集める「スタンダードコース」と、スタンプを7個集める「おろちコース」のクリアを目指す。入場時間を記録して、迷路に足を踏み入れると、迷路を仕切る板は高く、身長180センチの記者でも先を見通せない。試行錯誤しながら、地道に歩き回るしかなさそうだ。

とにかく分かれ道が多い。中には長く歩いた末に行き止まりになる道があるので、どの道を通って来たのか忘れてしまいそう

 コースの中でスタンプを押せる場所には赤、青、紫といった7色の小高いタワーがあり、迷路の中でもおおよその場所は分かる。ただ、単純にタワーの見える方角に行けばスタンプを押すことができるかと言うと、それほど甘くない。

 タワーのすぐ近くまで行けたように思わせて行き止まりだったり、行き止まりと見せ掛けて壁の板が回転して通れるようになっていたりと、大人でも驚く仕掛けが盛りだくさん。「お客さんとの心理戦」(田中理事長)という言葉の意味が、身に染みて分かった。

タワーにたどり着くと、中でスタンプを押せる。タワーに最低4回訪れなければ、ゴールができない

 

 ▼襲いかかる数々の難所

 挑戦者を悩ませるのは、板で区切られた迷路だけではない。敷地内の所々に行く手を阻む難所が待ち受けている。

難所の一つ「天空のかけ橋」。木の板に乗ると激しく揺れるため、手すりを持たないととても前に進めない

 歩くと激しく揺れる橋を渡る「天空のかけ橋」、傾いた建物内を進む「ミステリーハウス」、真っ暗な建物内で出口を探す「天の岩戸」、ロープを頼りに斜面を登り、狭い穴をくぐって進む「竜神火山」―。スタンプを集めるためには、これらの難所を乗り越えなければならない。場所によっては、往路と復路で最低2回通らなければならない。

 迷路を進む途中で、高い場所から迷路全体を見渡せる機会があったが、全体を見ても全く正解の道が分からない。山陰にこれほどの巨大迷路があったとは、と感心した。

高い所から迷路の全体図を見れば簡単…と思いきや、迷路の複雑さに絶望するだけだった

 スタンプを全て集める前にゴールに着いてしまい、後戻りするといったアクシデントもあったが何とかゴール。掛かった時間は37分だった。スタンダードコースのスタンプ4個のみなら、30分を切れるかどうかという線だった。早い人は「おろちコース」を十数分でゴールするというからびっくりだ。

記者が挑んだ、スタンダードコースのスタンプカード。おろちコースは7個のスタンプがそのままあるキーワードになっているので、ぜひ実際に挑戦して確かめてもらいたい

 

 

 ▼夢は「世界中の人が訪れるテーマパーク」

 なんとか迷路を抜け、田中理事長からドラゴンメイズの話を聞くことができた。田中理事長が手の込んだ迷路を作ったのは「親子で楽しめる施設を提供し、絆を強めてほしい」との思いから。開設当初は広さ約1000平方メートルだったが、遊んだ人の「とても楽しかった」という声を聞くたび「もっと楽しめるように」と改良を続け、気がつけば、今の広さになったそうだ。

2007年のオープン当初のドラゴンメイズ。当時から十分に巨大迷路だったが、お客さんの楽しみを追求した結果、難所がどんどん増え、今の大きさになった(資料)

 新型コロナウイルス流行前の陽だまりの丘の年間利用者は、関東や九州地方を中心に約4万人だったが、昨年は3万人ほど。県外への移動が難しくなった影響で、県内の児童が修学旅行で利用することが増えた。迷路の存在を知らなかった児童からは「都会の迷路よりも難しい」と好評だという。

 田中理事長は「地元の人に喜んでもらえるのは特にうれしい。ゆくゆくは年間利用客10万人を目指し、世界中の人から1回は来てもらえるテーマパークにしたい」と夢を描く。

リニューアル前、ドラゴンメイズの全景を眺める田中隆理事長(資料)

 島根県の山あいにある巨大迷路は、想像以上の難易度と完成度だった。次回は30分以内にゴールできるよう、コロナが落ち着いてから県外の友人を招いて再挑戦したい。

 

 ドラゴンメイズの営業時間は午前9時~午後5時。毎年冬季(12月~翌年2月中旬)は休業。料金はスタンダードコースが中学生以上660円、4歳から小学生まで550円、25人以上の団体は1人500円。おろちコースが中学生以上700円、4歳~小学生600円。

 

 山陰両県内で遊べる他の迷路は以下の通り。

・目田森林公園(出雲市佐田町反辺)
・ランズボローメイズ匹見(益田市匹見町匹見)
・名探偵コナン巨大迷路(鳥取県北栄町由良宿)※営業は毎年4~10月