「人間が生みだした妖怪の面白さを伝えたい」と話す佐々岡健次さん=浜田市金城町追原、美又温泉国民保養センター
「人間が生みだした妖怪の面白さを伝えたい」と話す佐々岡健次さん=浜田市金城町追原、美又温泉国民保養センター

 「ゲゲゲの鬼太郎」で知られる境港市出身の漫画家・故水木しげるさんのプロダクションで、チーフアシスタントを務めた佐々岡健次さん(79)=浜田市旭町本郷=が4月1日から1年間、浜田市の美又温泉街で個展を開く。高い画力を生かし地元に伝わる妖怪絵画など50点を展示。「現代は夜が明るく妖怪はすみにくいが、心に潜む恐怖と教訓を伝えたい」と話す。
 (板垣敏郎)

 佐々岡さんは浜田市出身で漫画家を志し1961年に上京。水木プロダクションで鬼太郎の絵などを描き、2001年のUターン後は地元の妖怪伝説を調べ絵画に仕上げる。

 会場は美又温泉国民保養センター(浜田市金城町追原)のフリースペースで、ボールペン、万年筆、水彩絵の具で緻密に完成させた、おどろおどろしい妖怪がずらり。「ぬりかべ」は島根県邑南町の伝説を基に描き、水木漫画より丸みを帯びて質感がある。昔は隣村に行く機会も少なく街灯のない夜は暗闇で、地区の境界でよく現れたという。

 「すねこすり」は、過去の経験からカワウソをヒントにした。子どもの頃、一緒に山道を歩いていた祖父が急によたよたし、「すねこすりの仕業」と答えたという。手に持っていたごちそうを目当てに、足元にまとわりついたらしい。

 死体を盗み人間に戻ろうとする「三本松の火車」、貧しくて川に捨てられた赤ちゃんが母親が通るたびに遠くで泣く「美又の川赤子」など、浜田ゆかりの妖怪を紹介。佐々岡さんは「見えないものへの恐怖と、人間のやましさが妖怪をつくった。現代人の戒めにもなるはず」と話す。