味の基本「五味」と呼ばれる塩味、酸味、苦味、甘味、うま味は、おいしさを構成する重要な要素とされる。全国の小学校で行われる「味覚の授業」は、地域の料理人や生産者たちが味の基本や五感を使って味わうことの大切さを教える。
島根県内であった授業をのぞいた。「誰かと一緒に食べたり、食べる場所がいつもと違ったりすると、おいしく感じることがあるよね?」と問いかけられた子どもたちは笑顔でうなずき、不思議そうに首をかしげた。その時の心情や取り巻く状況、過去の経験もひっくるめて味は形づくられる。味わうとはそういうことなのだろう。
脚本家の倉本聰さんには忘れられない味がある。終戦間もない1947年、父に連れられ行った闇市で、中学の入学祝いだと「栄養汁」なるものを食わされた。ドラム缶で煮込んだ進駐軍の残飯だった。よそわれた椀(わん)の中に大きなソーセージがあり、しめたと箸でつまみ上げると、食いかけの歯形がくっきりとある。
ためらいを捨て口に放り込むと、悲しいほどにうまかった。「味とは甘いとか辛いとか、単に味覚のものだと思っていたが、“悲しい味”というのもあるんだということを知った」(自著『破れ星、流れた』)。
子どもたちはこれから、いろんなおいしい味に出合うのだろう。食べるものがあること、食材や料理を作ってくれる人が身近にいることの有難味(ありがたみ)も、どうか忘れずに。(史)













