使い捨てプラスチックによる環境汚染対策として新たに定められた「プラスチック資源循環促進法」が1日、施行された。
製造、販売から廃棄、回収までさまざまな新施策を導入したが、ほとんどが企業の自主的取り組みと地方自治体の努力に任され、強制力は小さい。使い捨て製品を生産する企業の責任の所在も不明確で、プラスチック製品の削減に向けた根本的な対策には程遠い。新法の効果の検証と規制強化が必要だ。
新法は、リサイクルしやすい製品や「付け替えボトル」のように使い捨ての削減につながるような製品など、環境に配慮した設計に関する指針を国が示し、リサイクル材の利用設備への支援を行う。
プラ製品を販売、提供するコンビニやホテルなどに関しては、フォークやスプーン、ナイフ、ヘアブラシ、歯ブラシ、ハンガーなど12品目を定め、これらを前年度に5トン以上提供した企業に何らかの削減対策の実施を義務付けた。
一見、強力な法律のように聞こえるが、設計指針の採用も削減対策の内容も企業任せだ。フォークやスプーンが必要かどうかの意思確認だけでも削減対策とされる。
コンビニ各社は売り上げへの影響や利便性を理由にスプーンなどの有料化を見送った。中には「実験的」にプラ製フォークの提供を中止した社もあるが、これはほんの一部の店舗に限られる。
欧州連合(EU)諸国など多くの国が、リサイクル素材を一定量使うことを義務付けたり、使い捨て製品の販売や使用を禁止したりする中、この対策はあまりに軟弱だ。
一般の消費者に関連する新施策としては「一括回収」の導入がある。これは、ハンガーやおもちゃ、調理器具など現行の容器包装リサイクル法の対象外である製品まで、同法のリサイクルルートを活用して回収、リサイクルを行うことを可能にするというものだ。
リサイクルルートに乗る製品が増えれば、多くの作業が地方自治体の業務となる。しかも、対象となる製品の判断や中間処理が煩雑で、実施すれば、ただでさえ増加傾向にある自治体のプラごみ対策の手間と費用が増えることになる。一括回収に踏み切る自治体が現段階では少ないのも当然だ。一方で製造販売事業者には「自主回収」の促進を求めるだけだ。
廃棄物対策でよく耳にする「3R」とは削減、再利用、リサイクルを指す。対策の重要度もこの順なのだが、日本の政策は最後に来るリサイクルの偏重が激しく、より重要な削減や再利用の促進はなおざりにされてきた。新法もその名の通り、プラごみのリサイクルに主眼を置いているため削減や再利用を促進する方策には乏しい。
廃棄物対策を進める上で国際的に重要とされるものに「拡大生産者責任(EPR)」の原則がある。製品の生産者に、自社の製品がごみになった時の責任も負わせ、処理費用などを負担させることで、生産者が廃棄物削減対策を進める動機付けにするという政策だ。
日本のプラごみ対策はEPRが不徹底だと指摘されてきたが、今回もそれは変わらない。法律をいくつ作っても、大量生産、大量消費の構造を変えない限り、リサイクルに投じられるエネルギーと税金、手間が増えるだけに終わるだろう。