食と農を生かした島根県邑南町のまちづくりの取り組み「A級グルメ」の仕掛け人、寺本英仁(えいじ)さん(50)が今春、28年勤めた町役場を退職し、起業した。全国を回り、持続可能な地域づくりに向けた自治体への助言や研修、地域間連携を深める事業に取り組む。「邑南町だけでなく日本中の田舎を元気にしたい」と意気込む。 (糸賀淳也)
町職員として、町営の地産地消の飲食店オープンや食材の栽培から調理まで手掛ける「耕すシェフ」の制度化、全国の自治体との「にっぽんA級(永久)グルメのまち連合」の設立など、町内外で活躍。NHK番組「プロフェッショナル仕事の流儀」ではスーパー公務員として紹介された。
役場で経験を積み、ノウハウを身に付け、首をもたげたのが「邑南町だけが元気になっても一過性であり、日本全国が元気になることが必要だ」という胸にあった思い。同じ地域課題を持つ全国の自治体へ取り組みを広げようと、3月末で辞職し、1日付で「Local Governance(ローカルガバナンス)」を立ち上げた。
初年度は、北海道鹿部町と広島県北広島町で地域力創造アドバイザーとして若手職員の研修など人材育成を手掛け、ふるさと納税を増やす取り組みなどで助言する。
ほかに、企業向けシェアオフィス事業などを手掛ける東京都千代田区の管理会社の役員、ダイビングの趣味が高じた水中カメラマン、フードビジネスの実践経験を生かした東亜大(山口県)の客員教授という新しい肩書も。邑南と東京を拠点に全国を飛び回る日々は始まっており「田舎も都会もそれぞれ良さがある。地方と都市をつなぐことをやっていきたい」とやる気をみなぎらせる。