中国製冷凍ギョーザの毒物混入事件が世間を揺るがしたのは2008年のことだった。中国製食品に対する不信感から買い控えが広がる中、「弁当作れない」と自虐的なコメントが話題になったのを思い出す。家の冷凍庫の中を見ればどれも中国製だったと。うなずいた人は多かった▼輸入品がいかに食卓を席巻しているか、今度は春の値上げラッシュに気付かされる。小麦、チーズ、食用油、ケチャップ、コーヒー…。挙げれば切りがなく、値上げは止まらないばかりか、まだまだ増えそうな気配がする。いつ価格転嫁したらいいのか悩む経営者は多かろう▼コロナ禍からの経済回復に伴う世界的な食糧需要の拡大に加えて、物流費や包装資材の価格が高騰。円安の進行も物価上昇に拍車をかけ、要因は複合的に絡み合う▼ノルウェー産サーモンの値上がりがウクライナショックの影響だと聞き、すぐには結びつかなかった。欧州と日本を結ぶ航空便がロシア領空を飛べなくなったためで、回転ずし店などが調達難で困っているそうだ▼ならば、きっと待望の出荷だったに違いない。美保湾で養殖される「境港サーモン」の今季の水揚げが始まったと、おとといの紙面に見つけた。身近な旬を味わいながら、この際考えたい。海外産なしには食べていけない現実と国産や地元産の需要が盛り上がるのは、輸入品の供給不安や値上げの時だけでいいのかを。(史)