中国上海市では3月下旬から新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が続き、封鎖開始からの新規感染者は30万人を超えた。外出を厳しく制限する強権的な手法に市民の不満は強まり、警察当局との衝突も起きた。

 都市封鎖は中国全土の45都市に及び、対象者は全人口の26・4%の3億7300万人に上るとの海外機関の調査結果も公表された。日本企業を含む多数の内外企業が操業を停止。ロシアのウクライナ侵攻も重なり、中国の貿易は減速する。

 中国は人権に配慮して必要以上に国民の行動を制限せず、コロナ感染に関して積極的な情報公開に努めるべきだ。また、中国は米国に次ぐ世界第2の経済大国であり、各国への部品の供給国だ。これまでのゼロコロナ政策に固執せず、柔軟に対応して、国内と世界の経済への影響を最小限にとどめる責任がある。

 人口約2490万人の上海市の封鎖開始から3週間余り。連日2万人を超す新規感染者が出ている。多くは無症状で、死者数は数人と少ないが、日本の致死率に比較して疑念も出る。

 市内では、自宅待機を強制されて行動の自由を奪われた市民が不満を募らせている。インターネット上では、多数が「外に出たい」と声を合わせて警察官に怒りをぶつける動画が出回った。

 マンションを隔離施設にするとして立ち退きを要求された住民が警察官ともみ合いになり、住民が引きずり倒され、地面に押さえ付けられる映像も流れた。十分な食料や薬が提供されず、高齢者を病院へ連れて行けないとの訴えも出ている。

 中国政府は十分な食料や薬、日用品を供給し、できるだけ行動規制を緩和するなど市民の負担軽減に努めるべきだ。コロナについて、当局は報道を厳格に統制し、ネット上の書き込みも検閲してきたが、市民の要求など事実に基づく報道を規制してはならない。

 中国は2年前、湖北省武漢市から始まったコロナ急拡大を厳しい都市封鎖と感染者の隔離で封じ込めた。外国に先駆けたコロナ制圧や、今年2月のコロナ下の北京冬季五輪開催により、指導部への評価は高まった。

 習近平国家主席はゼロコロナ政策を貫いて成果を上げ、求心力を強めて、今年後半の共産党大会で総書記3選を果たす狙いだろう。3月、習氏は党中枢の会議で「ゼロコロナ政策を堅持し、感染拡大を迅速に抑制せよ」と指示した。

 だが、上海の都市封鎖で5月以降、上海にサプライチェーン(供給網)を持つ全ての自動車メーカーの生産が停止するとの見方が出ている。上海からの部品調達が滞り、マツダや三菱自動車が日本国内の工場を停止するなど日本の自動車メーカーにも影響が出ている。

 中国の今年1~3月期の国内総生産(GDP)は前年同期比4・8%増で、通年の政府目標5・5%前後を下回った。3月の輸入は前年同月比0・1%減で1年7カ月ぶりのマイナス。輸出の伸びも鈍化した。

 中国政府は自動車や半導体、医薬品など重点企業666社の生産を優先して再開する調整を始め、上海市は操業再開に向けた感染対策ガイドラインを公表した。中国は感染対策と経済の両立を図り、自国と世界の経済の再生に努めて国際貢献を果たしてほしい。