ロシアの侵攻によるウクライナからの避難民について、岸田政権は「緊急措置」として積極的に受け入れる姿勢を示している。これまでの日本政府の対応は「難民鎖国」と内外から批判されてきただけに、基本的には歓迎したい。

 難民と聞けば、戦争や災害で故郷を追われ、キャンプで暮らす人々が思い浮かぶかもしれない。

 しかし、難民条約の定義では、難民とは(1)人種(2)宗教(3)国籍(4)特定の社会的集団(5)政治的意見―を理由に迫害を受ける恐れから、母国を離れた人に限られる。この狭義の難民は「条約難民」とも呼ばれ、独裁国家から脱出した民主化運動家らが典型的だ。

 日本は難民条約に加入しており、来日した外国人が難民認定を申請すれば、出入国在留管理庁が審査する。条約の定める五つの理由に該当し、迫害の恐れがあると判断すれば、難民と認定。安定的な在留資格を付与し、日本語教育を無償提供するなど保護している。

 ただ、日本の難民認定者数は欧米諸国に比べ2桁も3桁も少ない。約40年間で841人だけだ。

 これに対し、紛争から逃れた人は避難民といわれる。難民条約の五つの理由に当てはまらないことが多い。入管庁も難民とは認定せず、ごく一部の避難民に人道的配慮から在留を特別に許可してきた。その数は2709人に過ぎない。

 条約を厳密に解釈すると、世界で激増する避難民を救えないことになってしまう。そこで、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、難民の範囲を拡大する方向のガイドラインなどを示してきた。

 国や地域によっては、条約難民に加え避難民も受け入れる「補完的保護」制度を整備している。ウクライナ避難民について、欧州連合(EU)が大量避難に関する「一時保護指令」を初めて発動し、欧州全域に迎え入れているのはその一環だ。

 日本政府も昨年、国会提出した入管難民法改正案に、補完的保護の新設を盛り込んだ。だが、入管庁幹部は「保護する範囲を広げようという趣旨ではない」と説明。改正案の要件は厳しく、従来の人道的配慮の在留特別許可より、保護される人がむしろ減るのではと懸念する専門家もいる。

 改正案は、難民申請中の強制送還を可能にする規定などを中心に世論の強い反発を招き、廃案になった。政府は再提出を検討しているが、ウクライナ避難民の保護を口実に、押し切るようなことがあってはならない。

 1970年代以降、ベトナムやカンボジア、ラオスからインドシナ難民が小舟に乗って日本に漂着した際に、政府は家族を含め受け入れた。近年は、タイとマレーシアのキャンプのミャンマー難民を日本に招く「第三国定住」も続けている。それでも、日本が保護した難民・避難民は累計約1万5千人にとどまる。

 今回のような行き当たりばったりの受け入れではなく、難民・避難民に関わる法制度を抜本的に改正する必要があろう。

 特に非正規で就労、滞在する外国人らの入国を防ぎ退去させるのが主な仕事の入管庁に、難民・避難民の保護も担当させるのは無理がある。補完的保護を含めた難民・避難民の認定手続きを入管庁から切り離し、独立した専門機関を設けるべきだ。