人口減少や新型コロナウイルスの流行長期化に伴う利用の落ち込みで、地方の鉄道経営が危機に陥っている。国土交通省は有識者による検討会で事態の打開策を探り始めたが、地域の「足」が失われればコミュニティーの機能が低下するなど住民への影響は大きい。鉄道事業者と地方自治体、国が危機感を共有し、「足」の確保へ知恵と持てる力を結集してほしい。

 地方の鉄道を取り巻く経営環境は極めて厳しい。国交省によると、全国の中小私鉄や第三セクターの計95社のうち、2019年度は79%で経常収支が赤字だった。

 地方で加速する人口減少に加え、道路整備が進んでマイカーへ利用客が移ったためで、地域鉄道の輸送人員はピークだった1991年度から2割以上減った。

 この状況に拍車を掛けたのがコロナ禍で、外出自粛やテレワークの広がりで利用がさらに落ち込んだ。国交省のまとめではJR6社の総営業距離のうち、1日の平均乗客数が1キロ当たり4千人未満にとどまったのは2020年度に57%と、前年度から16ポイントも悪化したことが明らかになった。

 4千人未満は旧国鉄改革時にバス運行へ転換する目安とされた低い水準であり、鉄道経営が急速に苦しくなっていることが見て取れる。

 この状況を受けて始まった国交省の検討会は、利便性・持続性の高い地域交通網をどのように再構築していくかや、国による支援の在り方を議論し、7月をめどに報告書をまとめる。事態は切迫しており鉄道事業者と自治体の関心は高い。関係者の取り組みを後押しする施策に結び付くことを期待したい。

 関心が集まる論点の一つは、路線の存廃やバスなどへの転換を進める際の鉄道事業者と沿線自治体の合意形成だ。住民や自治体の抵抗感から、事業者が望むような対話の場を設けられない例は少なくない。

 昨年8月、広島や鳥取など全国23道県知事は国交相に、路線廃止を慎重に考えるようJR各社への指導を要請。一方、JR東日本は検討会の初会合で、自治体との協議を円滑に進めるための「枠組みづくり」を国に求めた。双方の対話の難しさがうかがえよう。検討会として事態進展につながる有効案を示すことが強く望まれる。

 不採算路線の維持にどのような方策を取り得るかも焦点となる。検討会では複数の選択肢を示し、それぞれの利点や課題を整理する見通しだ。

 その一つは自治体や三セクなどが鉄道施設を保有し、運行業務は鉄道事業者が担う「上下分離(公有民営)方式」だ。事業者のコスト軽減が最大の利点で、信楽高原鉄道(滋賀)や若桜鉄道(鳥取)など導入例は多い。

 ただ観光資源の開発など沿線の魅力向上を伴わなければ利用は回復せず、自治体などの負担増につながる恐れがある。

 このほか富山市でJR富山港線に代わって導入された次世代型路面電車(LRT)や、九州北部豪雨で被災したJR日田彦山線の復旧に採用されるバス高速輸送システム(BRT)などが転換方法として注目されよう。

 「足」の維持に国の支援が欠かせないことは言うまでもない。国交省は検討会の結果を23年度の予算要求に反映させる方針だが、資金面に加えて税制や法制面でも効果的な手だてを急ぐべきだ。