昨年の流行語大賞にもノミネートされた「親ガチャ」という言葉を知っていますか。硬貨を入れ、レバーを回して取り出すカプセル式のおもちゃ「ガチャガチャ」のように、親を自分で選ぶことができず、どんな親のもとに生まれてくるのか〝運任せ〟で人生が決まってしまう、という意味で使われています。

 「そうだ、そうだ」とうなずく小学生や中高校生も多いでしょう。お金持ちの家に生まれた方が不自由のない生活を送ることができるし、島根県や鳥取県といった地方にいるより、東京など都会にいた方が遊ぶ場所も多いし、勉強をするにも学習塾やライバルも多く学力を伸ばせる、と思いがちです。

 ただ、本当にそうなのでしょうか。いくら環境に恵まれていても、夢や目標もなく、周囲からやらされているだけでは、力を伸ばせないでしょう。

 それに島根や鳥取にいても、努力を重ねていれば大きな夢をつかめるかもしれません。

 その代表例が、昨年夏の東京五輪ボクシング女子フェザー級で日本女子初の金メダルを獲得した米子市出身の入江聖奈選手(21)=日体大、米子西高出=でしょう。母親のマミさんが好きで自宅に置いていたボクシング漫画『がんばれ元気』を偶然読んでボクシングに興味を持ち、小学2年で地元のジムに入門。

 初めての公式戦となった小学4年の大会で引き分けに終わると号泣して悔しがり、5年の全国大会の時には、2012年ロンドン五輪男子バンタム級銅メダルの清水聡選手が持ってきたメダルを見て、「オリンピックで金メダルを取る」と宣言。厳しい練習を繰り返して、本当に夢をかなえました。

 そんな入江選手ですが、「私は逆上がりができないぐらい運動音痴。スポーツは才能だけではない」と話しています。努力すればメダリストになれるかもしれない、という夢を与えてくれました。

 新型コロナウイルス感染症が世界に広がり、3年目を迎えました。休校になって友達と長く会えなかったり、修学旅行や運動会などの行事が中止され、さみしい思いをしている人も多いでしょう。せっかくの大型連休も遠出できず、がっかりしている人もいるかもしれません。これは親ガチャに関係なく、誰にも共通すること。もうしばらく我慢が必要です。

 一方で世界に目を向ければ、ロシアのプーチン大統領による軍事侵攻で、ウクライナでは多くの民間人が犠牲になっています。親と引き離された子どもたちもいるでしょう。自分のこととして考えると、誰もが胸が痛むと思います。平和の大切さをかみしめたいです。

 さて、このコーナーの左上を見てください。題字の「論説」が筆文字で書かれているのに気付きましたか。

 3月に審査会があった「第19回山陰子ども書道展」で最優秀賞に選ばれた児童生徒のうち、小学4年から中学3年までの60人に題字の揮毫(きごう)をお願いし、今月1日から1週間交代で順に掲載していきます。

 新年度で学年が上がり、現在は小学5年から高校1年。他のページの「山陰総合」「山陰社会」「出雲 石見 鳥取」「しまね」「こだま」もそうです。

 未来をつくる児童生徒の力を借りるのと同時に、日頃の活動を応援しようという試みです。

 皆さんも夢に向かって、一歩ずつ前へ進んでください。