平家の猛攻からひらりひらりと逃れ、船から船へと飛び移る。「八艘(そう)飛び」と言われる有名な場面だ。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、源平合戦での源義経の見せ場「壇ノ浦の戦い」が終わった。『平家物語』では、平家随一の武将とされる平教経から逃れるため、義経が味方の船へ「ゆらりととび乗り給(たま)」いたと記される▼ドラマの舞台でよく登場するのが天皇がいる都と、源頼朝が拠点とする鎌倉周辺。ただ、不思議なことに遠く離れた山陰の地にも、源平ゆかりの伝承が残る▼島根県飯南町には、教経の子どもを身ごもった妻がたどり着いたとの言い伝えがある。また、承久の乱で北条氏と戦い、敗れた後鳥羽上皇が町内を通ったとの伝説もあり、沖の郷山は上皇の従者が山頂から配流地の隠岐を眺めたことから名前が付いたとされる。同県奥出雲町と広島県庄原市の境にある王貫峠も上皇が通過した地と伝わる▼推理作家の内田康夫さんは、後鳥羽上皇の「備北北行」ルートを題材に『後鳥羽伝説殺人事件』を執筆した。名探偵・浅見光彦は上皇と同じように王貫峠を抜け、事件に関連する奥出雲町内で捜査を開始する▼おとといの大河に教経は登場しなかったが、主人公・北条義時と相対する後鳥羽上皇は、歌舞伎俳優の尾上松也さんが演じる。隠岐までの様子が描かれることを楽しみに、伝承地を訪れ、歴史に思いをはせるのもいい。(目)