アイカシスイーツで販売している焼き菓子や生菓子
アイカシスイーツで販売している焼き菓子や生菓子

 「心身にやさしい」山陰両県のお店を紹介する「はるかほのやさしいお店巡り」。今回は、動物性食品を使わないスイーツを販売する「Aikashi Sweets(アイカシ スイーツ)」を紹介する。(Sデジ編集部・宍道香穂)

 店舗はなく、店主の山口愛加さん(37)が米子市内のイベントやオンライン販売を中心に、焼き菓子やケーキを提供する。牛乳やバター、卵といった動物性食品を使用しない「ビーガンスイーツ」を製造、販売している。

 

▷満足感あるビーガンスイーツ
 人気商品のひとつ「プレーンスコーン」(320円)を食べてみた。卵や牛乳を使用せず、豆乳、スペルト小麦の小麦粉、米油、ベーキングパウダーを使用する。また、甘みは砂糖ではなく、メープルシロップで付けている。一口食べると、ふんわりとしたメープルの香りが口に広がる。甘さ控えめながら香り豊かなスコーンは、十分に満足感を得られる味わいだ。

 透明な瓶に入ったイチゴのケーキ(680円)や抹茶ケーキ(700円)は、生クリームの代わりに豆乳クリームを使用していて、濃厚な味わい。ビーガンスイーツというと、さっぱりとした素朴な味わいのイメージがあったため、驚いた。果物やスポンジケーキが入っていて、1品でさまざまな味を楽しめるのも魅力だ。

瓶入りの抹茶ケーキ(左)とイチゴケーキ

▷コク出せるよう材料を工夫
 牛乳やバター、卵など動物性食品を使用しない菓子作りは、工程や材料が異なり難しいとされる。山口さんは「乳製品を使わないと味にコクが出にくい。素朴な味が好きな人もいれば、コクのある味わいが好きな人もいる。まろやかさを出すことができるよう工夫している」と話した。

 くるみやアーモンド、カシューナッツ、ピスタチオといったナッツ類を加えてクリーミーな味わいに仕上げたり、メープルシロップを加えて甘みを出したりすることで、物足りなさを感じないお菓子を作るよう心がけている。

 当初はクッキーやスコーンなど焼き菓子を中心に製造、販売していたが、最近はケーキやプリンといった生菓子にも力を入れている。「焼き菓子と比べて、ケーキなど生菓子はビーガン用のものが少ないと感じている。今後は生菓子を充実させていきたい」と山口さん。

Aikashi Sweets店主の山口愛加さん

 商品を購入した客からは「(味が素朴ではないため)ビーガンスイーツとは思えない」と、驚きの声が届く。シロップを使った優しい甘さのクリームが気に入り、「アイカシのクリームじゃないと嫌だ」と話す子どももいるという。山口さんは「子どもの舌は純粋。お子さんに喜んでもらえるのが一番うれしい」と目を細める。

 山口さんのお菓子を食べた小学生から「将来は愛加さんのようなパティシエになりたい」と書いた手紙をもらった。感慨深かったと言い「おいしいと言ってもらえることが励みになっている」とお客さんの支えに感謝する。

味だけでなく、華やかな見た目も楽しめるスイーツを用意している

▷オーストラリアでビーガンスイーツ販売
 山口さんは米子市出身。東京で8年間、会社員として勤務し、2012年、27歳の時に、ワーキングホリデー制度を利用してオーストラリアに2年間滞在した。レストランやカフェの店員、清掃員といった仕事を経験しながら現地で生活する中、動物性食品をとらない「ビーガン」(完全菜食主義者)の存在を知った。当時の日本ではビーガンが広く知られていなかったが、オーストラリアのレストランやカフェにはビーガン用メニューが豊富に用意されていた。

 ビーガンの知人に話を聞いたり、インターネットで調べたりすると、動物愛護や環境保護を目的にビーガンとして生活している人が多いと感じた。畜産の現場で劣悪な環境のもと飼育されている動物がいることも知り、「同じ生き物なのに、そういう(ひどい)扱いを受けているのが残念だと思っていた」と話す。自分も動物や自然を守るために行動したいと、山口さんもビーガン生活を送るようになった。

スコーンをつくる山口さん

 同時に、趣味だった菓子作りを生かしたいと独学でビーガンスイーツの作り方を学び、勤務先のカフェで提供した。帰国後、山口さんは地元・米子に戻り、菓子作りを続けた。本格的に菓子作りを学ぶため半年間、製菓の専門学校でノウハウを身につけ、2019年に開業した。

 今後について山口さんは「ケーキやプリンなど、生菓子のメニューを充実させたい。ビーガンについて知るきっかけや、食について考えるきっかけにしてもらえたら」と目標を抱く。穏やかでかわいらしい雰囲気ながら、山口さんからは、自分なりの信念を持ち行動する強さを感じる。山陰の地から、ビーガンスイーツの裾野が広がっていくとしたら、すごいことだと思う。

 イベントへの出店情報はインスタグラムで発信している。お菓子の注文はインスタグラム内のダイレクトメッセージで受け付ける。