自家製塩こうじを使った「ポン菓子グラノーラ」を持つ鹿糠(かぬか)さやかさん=雲南市木次町里方、発酵菓子カヌカ
自家製塩こうじを使った「ポン菓子グラノーラ」を持つ鹿糠(かぬか)さやかさん=雲南市木次町里方、発酵菓子カヌカ

 「心身にやさしい」山陰両県のお店を紹介する「はるかほのやさしいお店巡り」。今回は雲南市木次町里方の焼き菓子販売「発酵菓子カヌカ」を紹介する。(Sデジ編集部・宍道香穂)

▷ポン菓子とグラノーラ 地元産のフルーツも
 2021年12月にオープンし、店主の鹿糠(かぬか)さやかさん(37)が自家製の塩こうじを使った焼き菓子を提供している。

 

 看板商品は「ポン菓子グラノーラ」。麦を専用の機械で膨らませた「ポン菓子」に、オートミールやドライフルーツで作ったグラノーラを混ぜている。バランスの良い「オリジナル」味のほか「黒豆きなこ」や「出西しょうが」も用意している。価格はいずれも648円。今後は出雲市内の飲食店と連携して「西条柿」や「多伎いちじく」、「海士町みかん」といった島根県産食材を使用したポン菓子グラノーラも販売する予定。

 ポン菓子グラノーラのほかにも塩気と甘みが絶妙に混ざった「塩麹(こうじ)クッキー」(162円)や「抹茶クッキー」(194円)、オートミールや米粉、アーモンドパウダーを使った軽い食感の「オートミールビスケット」(162円)など約20種の焼き菓子を販売している。鹿糠さんは「まだまだ試作したいお菓子がたくさんある。次はビスコッティやドーナツを作ってみたい」と、新しいお菓子作りに意欲満々だ。

発酵菓子カヌカで販売している焼き菓子。すべての商品に自家製の塩こうじを使用している。

▷ポン菓子グラノーラ 食べてみた
 看板商品のポン菓子グラノーラ3種類を食べてみた。
 オリジナル味はポン菓子とオートミールのほかドライフルーツやスライスアーモンドなどがゴロゴロと入っている。一口食べて驚いた。ポン菓子やグラノーラというと甘いイメージがあったが、塩こうじが入っているため塩気が効いている。ドライフルーツの甘みとこうじの塩気が絶妙なバランスだ。

 出雲市斐川町産の「出西しょうが」を使用したポン菓子グラノーラは全体にショウガパウダーがまぶしてあり、口に入れた瞬間、ショウガの良い香りが広がった。シナモンスパイスも入っているためエスニックな味わいだ。

看板商品の「ポン菓子グラノーラ」(左)

 国産の黒豆ときなこを使った「黒豆きなこ」は塩気よりも豆の甘みや香ばしさを強く感じた。かめばかむほど、黒豆やきなこの優しい甘みが口に広がる。シンプルな味わいのポン菓子はどんな食材とも相性が良いと思った。
 こうじはタンパク質をアミノ酸に、デンプンを糖に分解するといった働きで、素材のうまみを引き出す。シンプルな味わいでありながら大豆や麦など材料のうまみ、香りを強く感じられるのは、こうじを使用しているお菓子ならではの魅力だ。

▷素材のうまみ引き出す「こうじ」の魅力
 ポン菓子グラノーラをはじめ、販売する焼き菓子に塩こうじを加えている。鹿糠さんは発酵をテーマにした飲食店で働いていたことをきっかけに、こうじ作りに興味を持ち、自分で作るようになった。温度や水分量を調節しながらこうじを作ることは「農業的な楽しさがある」といい「食べた時のおいしさに加え、育てる面白さも魅力」と話した。

「発酵菓子カヌカ」店主の鹿糠さやかさん

 こうじを菓子に加えると、麦やフルーツといった素材のうまみや甘みが引き出されるという。確かに鹿糠さんが作る焼き菓子は素材の味を生かした優しい味わいが特徴だ。客からも「甘さが控えめでうれしい」「素材の味がしっかりしていておいしい」といった声が届くという。

 食に興味があった鹿糠さんは高校卒業後、大学で栄養学を学び、東京都内の飲食店で調理の仕事に就いた。4年前に地元・島根へUターンし、両親が営む食料品店を手伝いはじめた。「いつかは独立して働きたいと思っていた。親が店でポン菓子を販売していて、ポン菓子で何かできるかもと可能性を感じた」と話す。鹿糠さんはポン菓子を使用した菓子の開発に取り組み、2021年12月、店をオープンした。

雲南市木次町里方、発酵菓子カヌカ
店内の様子。木目調で、ナチュラルな雰囲気に癒やされる。

 ポン菓子を使った菓子製造について、鹿糠さんは「ポン菓子と食感が似ているグラノーラは相性が良いと思った」と言う。ケーキやクッキーにも混ぜたが、ポン菓子ならではのサクサクとした食感が損なわれてしまったという。確かにポン菓子とグラノーラはサクッと軽い食感が楽しく、香ばしさや素材本来の味が感じられて、相性が良い組み合わせだと感じる。

 鹿糠さんは雲南市で開業した理由を「有機栽培などが盛んで、食への熱意を持っている人が多く、魅力的な場所だと感じた」と説明した。自身の焼き菓子をきっかけに、食について考える人が増えてほしいと願い「今後は店でイベントを開くなど食を通して人々がつながる楽しい場所にしたい」と夢を描く。おいしいお菓子をきっかけに、町の人々がつながる未来とは、なんてすてきなことなのか。ぜひ実現させてほしい。

 商品は店舗のほか、オンラインショップでも購入できる。道の駅「湯の川」(出雲市斐川町学頭)や道の駅「おろちの里」(雲南市木次町北原)にも納品している。店舗の営業は不定期で、予定はインスタグラムで確認できる。