「心身にやさしい」山陰両県のお店を紹介する「はるかほのやさしいお店巡り」。今回は衣類、食品、雑貨を販売している「フェアトレードfuku-mimi(フクミミ)」(出雲市塩冶有原町)を紹介する。(Sデジ編集部・宍道香穂)
店主の森山奈津子さん(53)が発展途上国の商品を適正な価格で取引する「フェアトレード」の観点から仕入れた衣類や雑貨、食品を並べ、販売している。
▷食材や衣類、雑貨を販売

食材の棚にはネパールやインド、スリランカ産スパイスのカレーキット、ブルキナファソ産のドライマンゴー、インドネシア産、ネパール産の紅茶葉などが並んでいる。
お薦めはフィリピン産のコーヒー。コーヒーを育てながら森林を保護する農法で栽培されている。すっきりと飲みやすい味わいが特徴とのこと。飲んでみると確かに、ほどよい酸味と爽やかな味わいが感じられ、飲みやすい。すっきりとしているが、コーヒーの豊かな香りも十分に感じる。おいしいコーヒーを飲むことで、環境保護への取り組みや生産者たちの生活を少しサポートできた気がしてうれしい。

衣類や雑貨もフェアトレードの商品。綿製品や刺繍製品、織物など、伝統的な技術で作られた製品を仕入れている。細密で美しい刺繍が付いたシャツは、インドの女性たちが手作業で縫っている。森山さんは「家事や育児をしながら自宅で作業ができるのがこの刺繍の特徴。彼女たちの仕事を守りたい」と話した。
オーガニックコットン100パーセント使用のTシャツは触り心地が柔らかく、着ていてリラックスできそう。衣類はほかにもスカートやエプロン、靴下などを並べている。

▷買い物は「応援の手段」
森山さんが雑貨店を始めるきっかけとなったのは、2015年に足を運んだ雑貨の展示会。東京の会場にさまざまな雑貨が集結し、見る人を楽しませていた。その中で、ひときわ森山さんの目を引いたのが伝統工芸品。「ほかの工業製品とは違い、温かみを感じた」と振り返る。細部まで作り込まれ、きちんと技術がある人が作った作品との印象も受けたという。
宅地建物取引士でもあり、不動産業を営んでいる森山さんは、事務所と同じ建物の中に雑貨の販売スペースを設け、fuku-mimiとしてオープンした。原材料の生産にかり出され十分な学習機会がない子どもたちや確かな技術を持つ職人たち、環境保護などの志を持ち生産活動に励む人々を応援したいとの思いから、フェアトレードの商品を仕入れ、販売するようになった。

伝統的な商品や大量生産されていない商品を仕入れて販売することは「小さい店だからできることだと思う」と森山さん。企業のように大規模な取引はできないが「細く長く、手が届く範囲で一生懸命できたら」と決意する。生産者にとってはかけがえのない支えになっていると思う。
森山さんは「買い物は単なる消費ではなく、生産者や関係者を応援する手段。買い物という行動一つで何かを変えることかできるかもしれないと知ってほしい」と問いかけた。大量消費、大量生産の社会に生きていると、安いものをたくさん買い込んだり、商品を良く知らないまま購入してしまったりする。たかが買い物と侮らず、商品の背景やストーリー、社会全体に及ぼす影響に思いを寄せ、考えながら消費活動をしなくてはと思った。

営業日は火~土曜日。午前11時~午後6時(土曜日は午後5時まで)。祝日は休業。インスタグラムで商品やフェアトレードに関する情報を発信している。