闇は広がるばかりだ。安倍晋三元首相の銃撃・殺害事件をきっかけに、明るみに出た自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係。共同通信の全国会議員を対象としたアンケートで、教団側と接点のある議員が少なくとも106人に上り、うち自民党が82人を占めた。
関わり方は多種多様だが、政治家は警戒感もなく選挙支援を受け入れ、票欲しさに安易に関連団体のイベント出席・祝電などの要請に応じる、教団側は政治家の名前を使い、その活動に社会的な信用を獲得しようとする、こんな構図が浮かび上がった。政策決定に影響力を行使する思惑も否定できないだろう。
かつて霊感商法が社会問題化し、最近も高額献金などの被害相談が相次いでいるとされる旧統一教会を、一般の宗教団体と捉えるべきではないはずだ。岸田文雄首相は「社会的に問題が指摘されている団体との関係については、国民に疑念を持たれるようなことがないよう十分に注意しなければならない」と強調した。「これから」だけでなく、党組織や所属議員とのつながりに加え、旧統一教会問題を政治と行政が半ば放置してきた「過去」も、詳細な調査と真摯(しんし)な検証が不可欠だ。
この問題への対応をアピールすることも狙った内閣改造・党役員人事は中途半端な印象を与えた。旧統一教会側との関わりを認めた7人の閣僚を交代させ、「教団との関係を点検し、厳正に見直すことを言明し、それを了承した者のみを任命した」と説明したものの、閣僚、副大臣、政務官で教団側との接点が判明したのは30人余りに上ったからだ。
コメントを控えていた山際大志郎経済再生担当相は、続投が決まってから関連団体の会合への出席などを公表している。接点のあった人をすべて排除するつもりはなかったとしても、何を点検し、どう厳正に見直すのか、首相の言う人選の基準が明確だったとは言い難い。
旧統一教会と政治を巡っては、安倍政権下の2015年に文化庁が名称変更を受理した経緯をつまびらかにすることが必要だ。当時の下村博文文部科学相は関与を否定している一方で、前川喜平元文科事務次官は野党のヒアリングに「文科相の意思が働いたのは100%間違いない」と語っている。活動実態を十分に踏まえた上での適切な判断だったのか。これは旧統一教会問題の核心部分とも言える。
共同通信の8月の電話世論調査では、旧統一教会との関係について、自民党や所属議員の「説明が不足している」という回答が9割近くに達し、「関係を絶つべきだ」も84%に上った。この数字は、国民が強い不信感を抱いていることを物語っている。
岸田政権は被害者の迅速な救済に向け、法務省、警察庁、消費者庁による関係省庁連絡会議を設置する。遅まきながらの対応だが、現状はもちろん、政治と行政の過去の対応にも、真正面から向き合ってもらいたい。
同時に自民党も組織として旧統一教会との決別を宣言し、長年にわたる教団との関係や政策決定への影響の有無を徹底的に調査して結果を説明する責任がある。そして、今こそ、国会の出番だ。この闇を解明するためにも、臨時国会の一日も早い開催が、岸田首相が繰り返す「信頼と共感を得る政治」の第一歩となる。