屋根のない2階建てバス「サンセットいずも号」が9月の期間限定で運行される。山陰では見かけない屋根のない2階建てバス。2階からの景色は良さそう。日御碕や道の駅キララ多伎あたりを走るとどんな感じになるのだろうか、ワクワクして一足先に乗ってみた。

 サンセットいずも号は出雲の自然と夕日を半日掛けてじっくり堪能してもらおうと、出雲観光協会が初めて企画した。このほど、関係者向けの試乗会があった。

 

屋根のない2階建てバス「サンセットいずも号」=出雲市駅北町、JR出雲市駅
 

 ◇前方シートで心弾む

 午後3時、集合場所のJR出雲市駅北口(出雲市駅北町)で高さ約3・7メートルの赤い車体に乗り込む。普段はもっぱら車移動でバスに乗るのは久しぶり。「せっかくならよく見える前方で」と前から3列目に腰を下ろす。赤、青、緑、黄色と色鮮やかなシートに座っただけで気持ちが弾んだ。

 出雲市駅を出発し、出雲大社(同市大社町杵築東)前の神門通りに向かう。
 

高さ約3・7メートルから見える街の風景。道路標識がすぐ頭上にある=出雲市内

 コンビニエンスストアやショッピングセンターが立ち並ぶ市街地、田んぼやビニールハウスが並ぶ郊外の景色は見慣れているはずなのに、視点が違うだけで真新しい。「あんなところに家があったのか」「こんなところに大きな木が生えている」とキョロキョロしているうちに稲佐の浜(同町杵築北)に到着した。下車して弁天島をカメラに収めると、そわそわしていた気持ちが少し落ち着いた。海はやっぱり気持ちがいい。

 ◇空が近い、きれい

 稲佐の浜から日御碕神社(同町日御碕)まではなかなか刺激的だった。道路を曲がるたびに道路脇に生い茂る木と車体がぶつかり、ザーと音を立てる。気づけば座席にはクリのイガ、バッタやクモが「着席」していた。名前の分からない鳥の鳴き声もあちこちから聞こえる。心地よい風と青っぽい自然の匂いに集中していると、エアコンのない車内にいることを忘れるくらい涼しさを感じる。運行する9月中旬にもなると肌寒く感じそうだ。

日御碕町の道路両脇に生い茂る木。葉や枝、虫が車内に飛び込んでくるので要注意=出雲市大社町
日御碕神社に向かう道中、青い海が見える=出雲市大社町

 午後5時すぎ、日御碕を後にし、JR田儀駅(出雲市多伎町口田儀)までの約1時間を車内で過ごした。通ったのは日本海沿いのくにびき海岸道路。出雲市駅を出発した時には青々としていた空が少しずつオレンジに変わっていく。サンセットいずも号に乗車して真っ先に感じたのは空が近いこと。「ゆっくりと空を見上げるのなんていつぶりだろう。きれいだな」。久しぶりに非日常感に浸った。
 

 ◇出雲らしい夕刻の空

 午後6時すぎに最後の立ち寄り場所・道の駅キララ多伎(同町多岐)に到着。あいにく雲が多く海に沈む夕日は拝めなかったが、オレンジのような、ピンクのようななんとも言えない夕刻の空だった。曇っているのもそれはそれで「出雲らしいな」とも思った。
 

くにびき海岸道路から夕刻の空を眺める=出雲市内

 夕方の時間帯はいつも原稿の締め切りに追われてパソコンとにらめっこする日々だ。たまにはゆっくりと自然を感じる時間を過ごすのもいいなと感じた。サンセットいずも号で海のきれいな夕日に出合えたら、どんな感じになるのだろうか。ぜひ体験してみたいと思った。

 運行日は9月17、19、23~25日の5日間。定員は各日40人で運行7日前までに申し込む。中学生以上3500円、小学生2500円、3歳未満無料。千円追加すると最前列の4席「スーパービューシート」を利用できる。問い合わせは同協会、電話0853(31)9466。