今年は全国一斉ではないものの、東京などでは2年連続で大型連休が新型コロナウイルスの緊急事態宣言の期間と重なった。外出しづらい中で観光地の話をしても詮無きことではあるが、毎年この時期になると、どうしても気になる場所がある▼山口県下関市の唐戸市場。小学校の給食で出た「鯨肉の七味焼き」の味が忘れ難く、クジラの街へ行けば何とかなるのではないかと、この10年で4度通った▼店舗の軒先に並んだ寿司(すし)を取り、「ふく汁」をすするのも魅力だが、クジラの竜田揚げを買って海峡沿いの公園で食べるのが、遠足気分で何とも楽しい。東京・築地との違いはこの開放感にある▼唐戸市場でも感染対策が徹底され、客が自らパック詰めをする方式から、注文を聞いて店員が詰めるのに変わるなど、工夫しながらの営業となっているようだ。かつて布教で来日したフランシスコ・ザビエルの本州上陸の地。交通の要所で人出も多く、店員の緊張感も推して知るべしだ▼明治期に野菜・果物市場として出発しながら、全国有数の魚市場として認知される唐戸は、かつて苦難の時代があったという。九州とつながる関門橋と山陽新幹線の開通が相次いだ1970年代。通過点になるとの危機感から、市を挙げて交流拠点づくりに励み、今がある。コロナ禍でも地方における食の拠点は必ず再評価されるはず。いつの時代もピンチはチャンスだ。(万)