細田博之衆院議長(島根1区)が、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側との関係を認める文書を公表した。関係団体の会合に計4回出席したほか、自身の選挙の際、支持者に関係者がいたことを明らかにした。ただ衆院議長ではなく、衆院議員の肩書を使ったA4サイズ1枚の文書には詳細が全く説明されておらず、野党側は「不十分だ」と反発。地元有権者からも不満の声が上がっている。
9万638-。昨年10月の衆院選で当選を果たした細田氏の得票数だ。得票率は56・0%。4年前の前回選より3・4ポイント下げたとはいえ、組織力を生かした盤石の戦いで、運輸相などを歴任した父の故吉蔵元衆院議員を超える11選を成し遂げた。
共に島根県選出衆院議員として長らく活動してきた竹下亘氏が衆院選前に亡くなっていただけに、地方の声を国政に届けるベテラン議員への期待は、より高まっていた。
選挙後、県選出国会議員では故桜内義雄氏以来、31年ぶりの選出で衆院議長に就任。人口減少で参院選では鳥取との合区になった島根選出の立場から「計算式によりただ地方の政治家を減らし、都会で増やすだけが能じゃない」などと、衆院選「1票の格差」是正を巡って作業が進む10増10減に再三、異論を唱えてきた。
今年5月には自民党議員のパーティーで、「議員を減らせば良いかどうか、この辺で考えた方がいい。1人当たり月額100万円未満であるような手取りだ。多少増やしても罰は当たらない」と発言し、インターネット上で炎上した。
衆院議長として中立な対応が求められるのは承知の上、地方の実情をアピールするため、批判も覚悟しての問題提起だったのだろう。物言う「三権の長」を頼もしく思う地元有権者も多かったはずだ。
ところがその後は一転して、物言わぬ「三権の長」になってしまった。原因は週刊誌報道。女性記者へのセクハラ疑惑に続き、陣営が昨年の衆院選で地元議員に支払った労務費が公職選挙法の買収に当たる疑惑があると報じた。セクハラ疑惑については事実無根で名誉毀損(きそん)に当たるとして、発行元に損害賠償や謝罪広告の掲載などを求めて提訴する一方、自らは口を閉ざし沈黙を貫いている。
そして今回の旧統一教会との関係を巡る問題。自民党は、議長就任による党派離脱中という理由で細田氏を調査対象から外していたが、3日に召集が迫る臨時国会の運営に支障を来しかねないと判断。細田氏自身による公表で火消しを図ろうとしたものの、不十分な内容で逆に火に油を注ぐ格好になった。野党の反発はもちろん、島根県内の自民党員からも「公表が遅い上に、文書自体が説明になっておらず、疑念が深まるばかりだ」と批判が上がっている。
もともと細田氏を巡っては、旧統一教会の関連団体の集会に出席した、など複数の接点が報じられていたが、取材にも応じていなかった。
沈静化が見えない状況を踏まえ、細田氏は30日、山口俊一衆院議院運営委員長らと会い、旧統一教会側との関係を巡り追加説明に応じる意向を示したという。ただ、野党側が求める臨時国会での説明に応じるかは見通せない。いずれにせよ、事実関係を自らの言葉で丁寧に説明しなければ、地元有権者の期待を裏切ることになる。