ビーチテニス普及に取り組む東京都出身の男性が、スナバ県・鳥取のきめ細かな砂質にほれ込み、近く鳥取県大山町に腰を据える。既に米子市・皆生海岸で毎週日曜の体験会開催を始めており「砂を生かしてにぎわいをつくり、日本一の競技人口と競技力のある地域にしたい」と意気込む。 (田淵浩平)
男性は、日本ビーチテニス連盟公認コーチの辻昌宏さん(52)。他のビーチスポーツ3種の愛好者や行政関係者らと連携し、複合型施設の開設を模索している。2020年秋に境港市新屋町の海岸で仮設したコートの常設化と、夏季に限った皆生海岸での設置に向け、クラウドファンディングによる資金集めを始めた。
競技との出合いは、東京で百貨店に勤めていた14年ごろ。長年打ち込んだ硬式テニスが題材の漫画で、主人公の練習として描かれていた。体験会に参加し、国際大会があるほどの競技性だけでなく、海辺の開放感や手軽さに魅了された。
仕事の傍ら用具の販売を手伝っていた15年、百貨店不況による希望退職の募集を機に、沖縄県へ移住。生業にした普及活動と並行する選手生活では、16年に始まった鳥取大会で2度の優勝を果たした。この経験から「砂質が国内最上級で、個人的にも縁起がいい土地」と20年6月、仲間の誘いで白兎海岸や賀露海岸がある鳥取市へ引っ越した。
靴を履く競技と比べ、捻挫しにくく、転んでも砂が痛みを和らげて体幹も鍛える生涯スポーツの可能性を見いだす。高齢化が進んだ鳥取県にもマッチしているという。国内の愛好者は約1万人といい、海水浴に限らない砂浜の活用策と確信し、清掃にも汗を流す。
5月16日までの毎週日曜午後は、荒天時を除き米子市皆生温泉4丁目の皆生海岸で無料体験会を開く。参加した同市河崎の保育士、前田知子さん(45)は「ラリーを続ける難しさはあるけど、ルールは簡単。米子は遊ぶ場が少ないと感じるから、人気が出るかもしれない」と評価する。
近く大山町沿岸部の空き店舗を自宅兼用品店に改装する。日本海側の気候には「思ったより冬は雪が多く、春も風が強くて寒い」と苦笑するが、同町豊成の木料海岸など適地が豊富な地域性が気に入った。男子テニスの錦織圭選手(松江市出身)のような、ビーチテニスの知名度向上を託せる逸材を発掘するため、今度は腰を据えるつもりだ。
▽ビーチテニス イタリアで約40年前に生まれた素足でする競技。硬式テニスと比べてコートが縦16メートル、横8メートルと狭く、ネットは1メートル70センチと高い。一回り小さいボールを「パドル」と呼ぶ板状のラケットで打ち合い、自陣で落とすと失点になるなどの違いもある。